研究課題/領域番号 |
23540043
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
野間 淳 横浜国立大学, 環境情報研究科(研究院), 教授 (90262401)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 射影多様体 / 射影埋め込み / 線形射影 / 定義方程式 / 斉次イデアル / カステルヌーボマンフォード正則数 |
研究概要 |
本研究では,次数d,次元n,余次元eの射影多様体Xに対し,「Xを含む次数(d-e+1)次以下の超曲面の共通部分はXと一致する」「(d-e)次以上の超曲面が作る線形束はX上で完備」という問題の解決を目指している.点からの線形射影がXとその像の間の双有理写像とならないような中心点を,非双有理中心点と呼ぶ,B(X)はXの外の,C(X)はXの内の,非双有理中心点の集まりとする.今年度前半に,これまでに得られている結果「C(X)を射影多様体Xから分離する定義方程式の構成」と「射影多様体Xの内点からの線形射影で,Xの因子が例外因子となる場合の特徴付け」について点検するとともに,論文としてまとめた.これをもとに,講演を行って,専門家との議論を行った.これにより,更にこの方向を進め,特に前者の結果については,定義方程式の次数の評価を行うが今後の課題となった.今年度後半には,上にあげた第一の問題を,C(X)が空集合でない非特異な射影多様体Xについて,C(X)を分離するXの定義方程式を,その次数の上限を評価しながら,代数的な手法で構成することを研究した.更に,この考え方により,C(X)が1次元以上の集合となっている非特異なX(ロス多様体と呼ぶ)のカステルヌーボマンフォード正則数の上限を評価することもできた.実際,ロス多様体は,直線を頂点集合に持つ次数aのスクロールのm(>1)次の因子となっていることを昨年度までに示してあるので,この事実をもとに今年度さらに研究を行って,Xは(d-e+1+((1-e)m+a-2))-正則であることを証明した.この結果は,ほとんどの場合((1-e)m+a-2)<0)に,期待された評価になっており,上の2つの予想(問題)の状況証拠を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的にあげた第一の問題「Xを含む次数(d-e+1)次以下の超曲面の共通部分はXと一致する」を調べるためには,空でないB(X)やC(X)を持つ射影多様体Xについて,これらの集合を分離する方程式を構成することが本質的な問題となることは,昨年度までの研究で分かっていた.このうち,Xが非特異でC(X)が一次元以上の集合となっている場合について,今年度の研究により,中間的な結果を得ることができた.また,第一の問題を特殊な場合に解決できることが,第二の問題「(d-e)次以上の超曲面が作る線形束はX上で完備」と関係していることも分かってきた.これらのことから,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果は,一部の場合に,まだ改善の余地があり,この点を研究することが24年度以降の課題である.また,今年の研究方法を適用して,B(X)やC(X)が0次元集合となる射影多様体についても,調べることも今後の課題である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では日常的な研究考察を柱にするが,そのうちで,計算可能な例を作成し計算機を用いた計算を行うために,計算機を導入する.更に,まとまった時間の取れる時期に,問題意識を共有できる研究者と共同のセミナーやワークショップを行って,これまで得られた結果を再点検するとともに,問題の新たな展開を探る(7-8月頃または2-3月頃に,佐賀大学とKAIST(韓国)へ出張予定).また,国内外の研究集会に参加し,最新の研究動向や結果について調査するとともに,専門家と直接議論することで,研究方向を探る(9月中旬のカタニャ大(イタリア),10月高知大学の研究集会にそれぞれ参加予定).
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