研究実績の概要 |
研究代表者は以前、片側原田環の研究を行い、得られた結果を駆使し、中山環・QF環等の古典的アルチン環を新たな視点で考察した。その研究成果は、山口大学の大城紀代市名誉教授との共著である Classical artinian rings and related topics, World Scientific Publishing, 2009 に、2009 年までの成果が纏められている。原田環は、研究代表者により、準原田環に一般化され、太刀川弘幸や C.M. Ringel による QF-3環の構造研究が、準原田環や原田環にうまく持ち上がることも示された。その折り、準原田環が機能するためには、片側の条件では、上手く機能せず、両側の条件が本質的であったが、原田環では片側の条件で機能し、これまで特に「両側」だから機能している、という研究結果は得られてこなかったのみならず、両側原田環の研究はほとんどされてこなかったのが現状である。これは、右原田環の構造をうまく反映するべき等元の表し方と、左原田環の構造をうまく反映するべき等元の表し方の融合が困難であった点が理由である。 本研究では、右原田環の構造と、左原田環の構造を融合させ、片側では得られない両側原田環固有の性質の研究を行った。片側原田環では、i-pair の現れる場所は、ある意味任意であるが、両側原田環では制約を受け、その制約は、左右の原田環の構造に深く関わっている。 中山環・QF環のもつ自己双対性は、片側原田環のみならず、両側原田環ももっていないことは、研究分担者の小池寿俊教授が示している。そのように、古典的アルチン環とは、異なる性格をもっているにも関わらず、両側原田環は主要なアルチン環の中では、最も古典的アルチン環に近い環であり、まだ始まったばかりともいえるその研究の成果は、再び古典的アルチン環の研究に還元されると思われる。
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