研究課題/領域番号 |
23540050
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 宣能 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60301298)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 母関数 / Chow 多様体 / モチーフ的ゼータ関数 |
研究概要 |
23年度は、研究の目的 2 に記した「1つの代数多様体に付随する多様体の系列・無限次元空間の研究」について、モチーフ的 Euler-Chow 級数と呼ばれるものの有理性を考察することを計画していた。これに関連して、多変数巾級数の有理性判定に関する定理を発見した。これは広島大学の木村俊一氏・首都大学の黒田茂氏との共同研究であり、論文は準備中である。 1つの代数多様体から、その部分多様体をパラメータ付けする Chow 多様体の無限系列が定義される。それらの Euler 標数の母関数が Euler-Chow 級数と呼ばれる多変数巾級数であり、Elizondo らによってトーリック多様体の場合の有理性が証明されていた。そこで、一般の多様体の場合に有理性が成り立つか、ということが問題となった。 有理性の判定のために、多変数巾級数の錐、すなわち 0 でない係数を持つ単項式で生成される錐に着目すると、級数が有理的であれば錐が特殊な形をしているのではないかと予想される。これは自然な予測であり、非有理性の証明に使いやすいものであるが、今までに公表されているものを発見できなかった。そこで、正しい定式化を与え、証明した。結論として、錐は必ずしも有限生成でないが、その閉包は有限生成である。証明は代数学的な手法および非 Archimedes 解析的な手法によるものの二つを与えた。 応用として、Euler-Chow 級数は必ずしも有理的でないことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今回研究した、多変数巾級数の有理性の判定条件は、多様体の系列から定義される母関数に応用でき、また巾級数が代数関数である条件への一般化などに発展する可能性もある。この点で、「多様体の無限系列を調べる」という本研究の目標に向けて一定の進展があったと考える。 しかしながら、研究の目的 1 に関しては例の計算などが進展せず、具体的な結果を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的 1 の「代数多様体のなす集合の規則性の研究」および、23 年度の実施計画に記した各種の実例の計算に重点を置く予定である。 また、関連する分野の研究者との討論を積極的に行うなど、研究全体に広がりを持たせるよう努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は高性能のパーソナルコンピュータを導入して数値計算を行う計画であったが、価格や新製品の発表時期などの関係で購入にいたらなかった。そこで、24年度に導入し、実例の計算などに使用する予定である。 併せて、関連する分野の研究者と活発に連絡を行うために旅費等として使用する。
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