研究課題/領域番号 |
23540053
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
寺井 直樹 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (90259862)
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研究分担者 |
上原 健 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80093970)
市川 尚志 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20201923)
宮崎 誓 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90229831)
河合 茂生 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (30186043)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 算術階数 / 極小自由分解 / Stanley-Reisner イデアル |
研究概要 |
本研究の目的はStanley-Reisner イデアル(被約単項式イデアル)の算術階数と極小自由分解についてその可換環論的、ホモロジー代数的性質を考察し、組合せ論的応用を探ることにある。イデアルの算術階数とは、そのイデアルが定義する空間が集合として何枚の超曲面の交わりとして表現されるかという最小数、あるいは、イデアルの言葉では、そのイデアルと根基イデアルを同じくするイデアルの中で極小生成系の元の個数が最小であるものの極小生成系の元の個数である。イデアルの算術階数を求めることは可換環論・代数幾何学における伝統的な問題である。被約単項式イデアルに関してはその算術階数は剰余環の極小自由分解の長さ、つまりその剰余環の射影次元以上であることが知られている。そこで、これら2つの不変量がいつ等しくなるかが問題となる。これまでに、例えば、生成元の個数がそのイデアルの高さに十分近い被約単項式イデアルについてはそうなることを示した。平成23年度は次数2の単項式で生成される被約単項式イデアルの中で特に、林の辺イデアルの算術階数に焦点を当てて研究した。林の辺イデアルの算術階数はその剰余環の射影次元に等しいとBarileにより予想されていたのであるが、他の分担者や連携研究者から様々な示唆を得ながら研究代表者と連携研究者の木村杏子との共同研究によりそれに対して肯定的な答えを与えた。また、このことに付随して、林はある種の組合せ論的分解を持つことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的はStanley-Reisner イデアル(被約単項式イデアル)の算術階数と極小自由分解についてその可換環論的、ホモロジー代数的性質を考察し、組合せ論的応用を探ることにある。被約単項式イデアルに関してはその算術階数は剰余環の極小自由分解の長さ、つまりその剰余環の射影次元以上であることが知られている。そこで、これら2つの不変量がいつ等しくなるかが問題となる。この問題を探求することが本研究課題の1つの大きな主題である。平成23年度においてはその成果として林の辺イデアルの算術階数がその余環の射影次元に等しいことを示した。これはまずまず順調な第1歩であると言えると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においては具体的イデアルの極小自由分解、算術階数等の計算に基礎を置いているので、組織的な具体例の計算が欠かせない。昨年度に引き続き、 Stanley-Reisnerイデアルのうち、様々な条件をつけた上で算術的重複度が小さい例を組織的に収集し、計算機によってそれらの様々な不変量を計算し、データベース作りを行う。これらのデータ集めは主に研究代表者が担当する。次に、得られたデータベースをもとに定量的関係を帰納的に探る。そして、得られた数値的条件が理論的に正しいことを証明しようと試みる。さらに、極値的条件を持つものを組織的に組合せ論的に構成することを試みる。これらの研究段階では研究分担者・連携研究者と緊密な研究連絡をとりながら研究をすすめたい。組合せ論的観点、位相幾何学的観点、純可換環論的観点のそれぞれの長所をとりいれながら研究していくのが有望であると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者は連携研究者である日本大学の吉田健一と、緊密な研究連絡をとり、研究討論し、共同研究を進めていきたい。研究代表者は年間3度は、日本大学を訪問したい。これには、1回8万円前後必要なので、年間24万円必要となる。研究代表者は柳川浩二とも緊密な研究連絡をとり研究討論し研究を進めていきたい。研究代表者は年に1回は、関西大学を訪問したい。これには、約7万円必要となる。Stanley-Reisnerイデアルの算術階数については、その専門家であるところの静岡大学の木村杏子に助言を仰ぎたい。夏期休業を利用して、1週間ほど集中して研究討論したいと思う。これには、費用が約10万円必要となる。得られた成果を毎年定期的に行われる可換環論シンポジウム、可換環論セミナー等で発表し、そこで出されたコメント、アドバイスを参考にしたい。そのための費用として約20万円程度必要である。また、研究代表者はスウェーデンで行われるサマースクールに参加し、単項式イデアルの自由分解の構成法に関して情報収集したいと考えている。これにはまた、約40万円程度必要である。さらに、研究上必要な文献の購入費として20万円を見込んでいる。
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