研究課題/領域番号 |
23540053
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
寺井 直樹 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (90259862)
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研究分担者 |
上原 健 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80093970)
市川 尚志 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20201923)
宮崎 誓 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90229831)
河合 茂生 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (30186043)
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キーワード | 算術階数 / 極小自由分解 / Stanley-Reisner イデアル |
研究概要 |
本研究の目的は、Stanley-Reisner イデアルの算術階数と極小自由分解についてその可換環論的、ホモロジー代数的性質を考察し、組合せ論的応用を探ることにある。イデアルの算術階数とは、そのイデアルが定義する空間が集合として何枚の超曲面の交わりとして表現されるかという最小数、あるいはイデアルの言葉では、そのイデアルと根基イデアルを同じくするイデアルの中で極小生成系の元の個数が最少であるものの極小生成系の元の個数である。イデアルの算術階数を求めることは可換環論・代数幾何学における伝統的な問題である。Stanley-Reisner イデアルに関してはその算術階数はその剰余環の極小自由分解の長さ、つまり、その剰余環の射影次元以上であることが知られている。そこで、これら2つの不変量がいつ等しくなるかが問題となる。平成23年度には林の辺イデアルに関してその算術階数とその剰余環の射影次元が等しいことを示した。平成24年度には高さ3のGorenstein Stanley-Reisner イデアルに関して同様の問題を考察した。この場合は巡回多面体の境界複体のStanley-Reisner イデアルに帰着されることがわかった。また、平成24年度にはStanley-Reisnerイデアルのべき射影次元に関して研究した。Stanley-Reisner イデアルのべきの極化とヤング図形のある種の操作に関係づけることにより高さ2の場合にはべきに関して広義単調増加であるかであることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、Stanley-Reisner イデアルの算術階数と極小自由分解についてその可換環論的、ホモロジー代数的性質を考察し、組合せ論的応用を探ることにあった。 Stanley-Reisner イデアルに関してはその算術階数はその剰余環の極小自由分解の長さ、つまり、その剰余環の射影次元以上であることが知られている。そこで、これら2つの不変量がいつ等しくなるかが問題となる。この問題を探求することが本研究課題のひとつの大きな主題である。平成23年度には林の辺イデアルに関してその算術階数とその剰余環の射影次元が等しいことを示した。平成24年度には高さ3のGorenstein Stanley-Reisner イデアルに関して同様の問題を考察した。この場合は巡回多面体の境界複体のStanley-Reisner イデアルに帰着されることがわかった。これはまずまずの進展であると言えると思う。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においては具体的Stanley-Reisner イデアルの算術階数、極小自由分解等の計算に基礎を置いているので、組織的な具体例の計算が欠かせない。今平成25年度もできるだけ多くの例を組織的に収集し、計算機によってそれらのStanley-Reisnerイデアルの極小自由分解に現われる様々な不変量を計算し、データベース作りを行う。これらの研究初期におけるデータ集めは主に研究代表者が担当する。次に、得られたデータベースをもとに定量的関係を帰納的に探る。そして、その条件が理論的に正しいことを証明しようと試みる。さらに、極値的条件を持つものを組織的に組合せ論的に構成することを試みる。これらの研究段階では連携研究者と緊密な研究連絡をとりながら研究をすすめたい。組合せ論的観点、位相幾何学的観点、純可換環論的観点のそれぞれの長所をとりいれながら研究していくのが有望であると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究においては具体的環のHilbert関数、極小自由分解等の計算に基礎を置いているので、組織的な具体例の計算が欠かせない。平成25年度は計算機を買い換える必要がある。複数購入することにより、計算がさらに能率的に進むようにしたい。さらに数式処理ソフトウエアー「Mathematica」「Maple」の最新版を購入したいと思う。これら合計で約70万円かかる。研究代表者は連携研究者である木村杏子と緊密な研究連絡をとり研究討論しながら研究をすすめたい。年に3回程度は研究代表者は木村杏子を訪問する予定である。これには1回8万円前後必要なので年間24万円必要となる。また、研究代表者は柳川浩二とも緊密な研究連絡をとり研究討論し研究を進めていきたい。研究代表者は年に1回は、関西大学を訪問したい。得られた成果を毎年定期的に行われる可換環論シンポジウム、可換環論セミナー等で発表し、そこで出されたコメント、アドバイスを参考にしたい。そのための費用として約30万円程度必要である。さらに研究代表者は組合せ可換環論の大家である デュイスブルク・エッセン大学の Herzog 教授を訪問したい。ドイツのHerzog 教授のところには 昨年度も訪問したのであるが、たいへん有意義であった。というのは、Bruns , Conca, Roemer等のこの分野における活発な研究者たちが、始終、彼のいるデュイスブルク・エッセン大学に滞在し、活発な討論を続けているからである。そこで、他の研究者たちと日程を合わせて、3週間ほど、デュイスブルク・エッセン大学に滞在することは本研究遂行上情報交換や研究上の助言、示唆を受ける上で非常に有意義であると判断される。これには約70万円が必要となる。以上すべてを遂行すると年間約130万円の旅費が必要となる。
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