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2012 年度 実施状況報告書

群環のAuslander-Reiten有向グラフ

研究課題

研究課題/領域番号 23540054
研究機関大阪市立大学

研究代表者

河田 成人  大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50195103)

キーワードAuslander-Reiten有向グラフ / 有限群の表現
研究概要

有限群の整数表現(完備離散付置環上の表現)において、 Auslander-Reiten 有向グラフの連結成分で 高さが0の表現加群を含むものについて研究を進めた。高さ0の表現加群のソースは、トレース写像が分裂する表現加群であるが、このような表現加群を含むAuslander-Reiten 有向グラフの連結成分については前年度に研究を行っており、その成果を活かすことができた。以下ではLを高さ0の表現加群とし、SをLのソースとする。このときLを含むAuslander-Reiten 有向グラフの連結成分の形状がA無限型と呼ばれる半平面的に広がる格子状かもしくは半無限に伸びる筒状であることと、Sを含む連結成分の形状がA無限型であることとが同値であることが分かった。特に、Sを簡約化して得られるモジュラー表現加群が直既約ならばSの連結成分も形状はA無限型であるので、Lの連結成分もA無限型と言える。また、この結果を導く過程において、Lの連結成分に含まれる表現加群のヴァーテックスはすべてLのヴァーテックスに一致することも確認できた。さらに、 additive functionと呼ばれる関数が連結成分の形状を決定する上で重要な役割を果たすが、表現加群を簡約化したモジュラー表現加群の直既約分解の様子がadditive functionを構成する一つの方法を与えることも分かった。この事実は、一般のAuslander-Reiten 有向グラフの連結成分の形状を考察する場合にも非常に有効であるものと期待される。一方で、剰余体が標数2となるような完備離散付置環上の表現加群のカテゴリーにおいては,トレース写像が分裂する表現加群を含む連結成分の形状はA無限型であるので、Sの連結成分の形状はA無限型であり,ひいてはLの連結成分がA無限型であることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

有限群の整数表現(完備離散付置環上の表現)の Auslander-Reiten 有向グラフの連結成分の形状を決定することを大きな目標としている。有限群の整数表現において、無限表現型の整群環の Auslander-Reiten 有向グラフの連結成分の形状は,特殊な例外を除いて,A無限型と呼ばれる半平面的に広がる格子状かもしくは半無限に伸びる筒状であろうと予想している。これまでには自明な表現加群や射影加群を含むような連結成分の形状は A無限型であることが本研究代表者によって確かめられている。ただ、完備離散付置環上の整数表現加群のなすカテゴリーは体上のモジュラー表現加群のなすカテゴリーに比べて非常に大きくて,取り扱いに注意しなくてはならず、一般論として連結成分の形状を判定することは大変困難なことと思われる。しかしながら最近になって、自明なソースを持つ加群やトレース写像が分裂する加群など重要な表現加群を含む連結成分の形状が、ある条件下のもとではあるが、A無限型であることを示すことができた。また、高さ0の既約な表現加群は群環のブロックの理論において中心的な研究対象であので,このような表現加群を含む連結成分について調べることが必要と思われる。現段階では,高さが0の表現加群を含む連結成分の形状を決定できるまでには至ってはいないが、A無限型となるための条件がいくつか見つかったので,これからの研究に進展が期待できる。

今後の研究の推進方策

有限群の直既約な表現加群について研究する場合には、ヴァーテックスと呼ばれる部分群とソースと呼ばれる表現加群について調べることが重要となるが、ソースを含むAuslander-Reiten 有向グラフの連結成分の形状ともとの表現加群を含む連結成分との関連性にも着目して研究を進める。特に平成24年度に得られた結果は、高さ0の表現加群を含むAuslander-Reiten 有向グラフの連結成分の形状と、そのソースの連結成分の形状との関連性を追及したものであった。結果として得られた関連性をさらに追求することで、高さ0の表現加群の連結成分の形状が判明されることが期待できる。また、有限群の整数表現の重要なものとして、擬既約加群と呼ばれる表現加群があり、その例としては既約加群やトレース写像が分裂する加群が挙げられる。この擬既約加群を含むような連結成分の形状についての研究を行う。
ところで、群環は多元環のなかでも重要なクラスであり、群多元環の一般化として自己入射的多元環やFrobenius 環,概Frobenius 環などと強く関係している。群多元環と一般化された様々なクラスの環の類似性と相違性を追求することによって、多元環やアルティン環の研究のさらなる進展を目指したい。なお、環論全体の研究を推進するために毎年「環論および表現論シンポジウム」が開催されている。このシンポジウムには多くの環論研究者が参加して最新の研究成果が発表され、活発に研究交流が行われており、本研究課題の遂行においても大変重要な意味をもつ。このシンポジウムを継続的に成功させるために運営面からも協力していきたい。

次年度の研究費の使用計画

研究課題を遂行するにあたり、最新の研究成果などの情報収集および研究者との議論や意見交換が必要となるが、そのために国内外の研究集会に出席し、研究協力者との研究打ち合わせをするための旅費として研究費を使用する。ところで、平成24年度には参加すべき研究集会の多くが近隣で開催されたた。そのため、平成24年度の直接経費のうち36,642円を25年度に繰り越して研究集会に参加するための旅費に当てることで、研究費を有効に活用する。
また、最近の数学研究の進度は早く、多くの専門書が出版されている。研究を進めるためには、最新の研究結果が発表された図書や研究集会の報告集が必要となるので、群論・環論・表現論をテーマとした代数学の専門書や関連する分野の数学専門書を購入するために研究費を使用する。
さらに、群多元環は環論のなかでも重要な位置を占めており、他のクラスの様々な環と互いに影響を及ぼしあっている。有限群の表現論を環論全体の枠組みの中で研究を発展させていくうえで、毎年継続的に開催されている「環論および表現論シンポジウム」が大変大きな役割を果たしている。このシンポジウムでは環論および表現論の分野の広範なテーマにおける重要な研究成果が数多く発表され、多数の研究者が一堂に会して議論することができる絶好の機会である。このシンポジウムを支援するため、講演者の旅費の補助やシンポジウム報告集の出版費などとして研究費を使用したい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] On Auslander-Reiten components and splitting trace lattices for integral group rings2012

    • 著者名/発表者名
      Shigeto Kawata
    • 雑誌名

      Journal of Algebra

      巻: vol.359 ページ: 69-79

    • 査読あり
  • [学会発表] 群環の高さ 0 の表現加群と Auslander-Reiten 連結成分について2013

    • 著者名/発表者名
      河田成人
    • 学会等名
      RIMS 研究集会 「有限群とその表現,頂点作用素代数,代数的組合せ論の研究」
    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所
    • 年月日
      20130109-20130109

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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