研究課題/領域番号 |
23540055
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
藤本 圭男 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90192731)
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キーワード | endomorphism / extremal ray / conic bundle / DESP / Atiyah / Del-Pezzo bundle |
研究概要 |
一貫して小平次元が負の3次元射影代数多様体Xで, 非同型なエタール自己正則写像fを許すものの双正則な分類を行なった. これらの多様体の候補の絞込みと大まかな分類に関してはほぼ成功した. 先ず, Xの端射線Rの収縮写像が双有理射を与える場合, Xは楕円曲線を中心とする爆発(の逆)により得られることを森理論を用いて証明した. 難点は因子型の端射線Rが無限個存在する例が存在する為, 極小モデル理論を自己正則写像の範疇で適用することが不可能なことにある. 非同型な自己正則写像を持つXに対し, 因子型収縮写像を逐次続行すると, Xと双有理同値な3次元多様体達で因子型の端射線を持たないもの, 及びその間の非同型なエタール有限射の無限列が得られる(XのDESPと略記する). そこでXのDESPの構造を端射線の収縮写像がコニック束, または楕円曲線上のDEl-Pezzoファイバー束を与える場合とに分けて解析した. 適当な底変換と因子収縮写像を施すことによりDESPは射影束の場合に帰着される. 幸いなことにAtiyahによる楕円曲線上のベクトル束の分類結果を適用することが可能であった. DESPの大まかな構造を調べた上で, 然るべき楕円曲線を中心とする爆発により元来の多様体Xを調べるという一見して回り道ではあるが着実な方法を選択した。起こりうるDESPを全て分類しきった結果, 大方の場合Xの端射線の個数は有限個であり, 極小モデルプログラムは自己正則写像の範疇で機能することが判明した. Xの適当なエタール被覆をとると小平次元が負の曲面Sと楕円曲線Eとの直積に分解する場合と, 分解できない場合が起こりうる. 後者は小平次元が負の仮定の下で初めて現れる現象であり, そのDESPはAtiyahが構成した楕円曲線上の次数零の直既約なベクトル束と深く関っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小平次元が負で, 非同型なエタール自己正則写像を許す3次元代数多様体の大雑把な分類・絞込みにはほぼ成功した.その過程で分類の鍵となる次の重要な事実が得られた. 'DESPが繊維曲面上のコニック束の場合, 底曲面は適当なエタール被覆をとれば, 楕円曲線と射影直線との直積, 又は楕円曲線上の階数2, 次数0の直既約ベクトル束の射影束のいずれかになる`. DESPの可能性を全て調べ尽くす手法の為, 確実ではあるが論文にまとめると長大(現在で150頁)になるという欠点も抱えている. 困難の要因のひとつに, DESPから楕円曲線を中心とする爆発を施す際, 爆発の中心となるべき楕円曲線の候補は分かっても, 爆発を実行して回復させた元の多様体の大域的構造が複雑であり, 一言では記述できないことが挙げられる. 他方, 研究目的に記載した非同型な自己正則写像により保存されるデータを探索することも大事であり, 試みたが決定打は得られず仕舞いであった.
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今後の研究の推進方策 |
現在, 非同型なエタール自己正則写像を許す小平次元が負の3次元多様体の論文の執筆はまとめの段階に入っている. 残された最後の課題は, DESPから楕円曲線を中心とする爆発によって回復された元の多様体の大域的構造を明快に記述することである. 大方の場合, 楕円曲線上のファイバー束になると予期されるが, これを解決して論文を完成させたい. 自己正則写像により保存されるデータの研究については, 近年大発展を遂げている極小モデル理論を手本としつつ考察する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は論文の成果を発表するより論文の執筆に比重を置いた所為で, 研究集会に出かけて成果発表することはやや控えた. その為,使用予定の旅費が未使用となり, 次年度に繰越となった. 次年度は論文発表や意見交換の為に繰越金もあわせて使用予定である. 又, 私の所属する奈良医大は医学部ということもあり, 数学書が圧倒的に不足している. これは研究上, 大きな障害となる為, 数学書の購入にも充てたい. 研究上を遂行する為に高性能なパソコンも購入予定である.
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