研究概要 |
首尾一貫して小平次元が負の3次元射影代数多様体Xで, 非同型なエタール自己正則写像を持つものの双正則分類を行なった. これらの多様体の候補の絞込みと大まかな分類に関してはほぼ完結し, Xの適当なエタール・ガロワ被覆X'が6通りに分類される事を示した. 結果は小平次元が非負の場合ほど簡潔ではなく, X'が繊維曲面と楕円曲線の直積に分解する場合と分解しない場合とに分かれる. 後者は小平次元が負の仮定の下で初めて出現する現象である. まずXの端射線Rの収縮写像が双有理射を与えるとき, Xは楕円曲線を中心とする爆発により得られる事を森理論を用いて証明した. 難点の一つは, 因子型端射線を無限個持つ多様体が存在しうる為, 極小モデルプログラム(MMP)が自己正則写像の範疇で必ずしも機能するとは限らない事である. そこでXに対して因子型収縮写像を有限回施し, Xと双有理同値な3次元多様体の間の非同型なエタール有限射の無限列で因子型の端射線を持たないもの(DESP)を構成した. 次にDESPの構造を端射線の型(C 型,D型)に応じて解析した上で楕円曲線を中心とする爆発を遂行し, 元の多様体Xの大まかな構造を調べた. 結果, 無限個の因子型端射線を持つ多様体は非常に特殊な場合に限定され, 大方の場合にMMPは自己正則写像の範疇で機能する事が分かった. 再度,MMPを走らせ, DESPを非同型自己正則写像の範疇で構成してXの構造を調べるという一見遠廻りの手法を採用したが, Atiyahによる楕円曲線上のベクトル束の分類結果が適用出来て精密な分類が得られた. 最終年度にはXのDESPがD型の場合, X'は大抵,楕円曲線上のファイバー束となる事を示した. また楕円繊維曲面の上のP1ファイバー空間が非同型なエタール自己正則写像を持つ為の判定条件を見出した. 現在論文を作成中である.
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