本研究の基本的な方向は、多項式環上の単項式イデアルの挙動を通じて、可換環論や圏論における抽象的な概念を離散数学的な立場から表現することを目標としたものである。 本研究での今までの実施内容としては、次の2テーマを中心に実施してきた。1.グラフから定まるStanley-Reisner 環の列性Cohen-Maculay性や非混合性についての研究、2.アルティン k-代数のLefshetz性についての研究、である。 最終年度の研究としてはこれらの研究を、圏論の観点から考察することを試みた。具体的には、Stanley-Reisner 環上での表現論を展開することである。一般に、射影加群・入射加群・直既約加群などは代数学においては身近な対象だが、具体的にその振る舞いを調べることは、なかなか困難なものである。それをStanley-Reisner環上で考えることにより、射影加群などの振る舞いが離散数学な言葉を用いることで計算に乗せたり、可視化したりすることができるものと考えている。一方のアルティン代数のLefschetz性の研究においても、表現論的考察は主要なアプローチの一つとして挙げられており、このような理由から圏論的な観点からの研究の必要性がでてくると考えている。 研究の実施内容としては、三角圏や導来圏の概念を再確認し導来関手の扱いに自由になること、及び、アルティン代数の表現論に関する文献を調査し、主要概念であるクイバーや almost split 列の概念を本研究課題の対象に適応させる方法について考察した。
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