研究概要 |
本プロジェクトは 2 次元 Calabi-Yau 多様体である K3 曲面の族に対する周期写像を超幾何函数との関連のもとで捉え、数論的な応用をもたらしたい、という構想で進められた。上記の周期写像においては、像である moduli space 上で modular 群ないし monodromy 群に関するある種の保型形式ないしは保型函数が、逆写像として生じる。この際にできる保型函数を明示的に求めることが、構想実現のための基礎となる。Abel 曲面や Hilbert modular form の研究は、それぞれの立場からは様々な研究があるが、幾何学的な背景を伴った、多様体の径数と moduli 空間の変数との間の具体的な対応を記述する保型函数論の進展が望まれる。 [最終年度研究成果] 複素アーベル曲面族を、ホッジ的に同値な楕円型 K3 曲面族の周期写像を通じて、考察し、そのモジュライ空間を自然なコンパクト化を明示的に構成した。その結果は、"Modular maps for the family of abelian surfaces via K3 surfaces", Math. Nachrichten (掲載確定、永野中行氏との共著)として発表される。 [研究期間全体での成果]上記の他に、 1) 2 変数 K3 モジュラー函数の応用としてガウス算術幾何平均定理およびヤコビの公式の拡張を行い、"A Jacobi type formula for a family of hyperelliptic curves of genus 3 with automorphism of order 4", Kyushu J. Math., vol. 65 (2011), 169 -- 177, として発表した。 2) また、位数 3 の自己同型を持つ種数 3 のリーマン面の族に関する保型函数が 2 変数 K3 モジュラー函数として得られるが、この函数の 1 変数への制限によって判別式 6 の 4 元数環に対応する志村曲線の記述が得られることを示し、共著論文 M. Petkova and Shiga, H.: "A new interpretation of the Shimura curve with dis- criminant 6 in terms of Picard modular forms", Archiv der Mathematik, vol. 96(2011), no.4, 335 -- 348,として発表した 。
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