研究課題/領域番号 |
23540062
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
佐藤 拓 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 准教授 (20433310)
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キーワード | トーリック多様体 / 森理論 / ファノ多様体 |
研究概要 |
本年度は,トーリック森理論の基礎理論の発展に関する部分を主に行った. 通常,トーリック森理論は,特異点を許したカテゴリーで議論をしており,特異点を許さないことには何事も進行しない,と思われていた.しかし,前年度までに確立した手法を元に研究を進めると,原始的コレクション,原始的関係等の情報より,代数曲面の分類理論と同様に,非特異,つまり特異点を排除したカテゴリーの中だけでも理論が上手く流れていくことを観測した.明白に得られた結果としては,森コーンの二次元面にある種の特別な1サイクルが存在しているときに,その非特異射影的トーリック多様体からは再び別の非特異射影的トーリック多様体への因子的収縮写像,すなわちブロー・ダウン,またはフリップが構成出来ることを示した. この,非特異射影的トーリック多様体のカテゴリーの中だけでトーリック森理論を行う,という理論の応用として期待されることの一つに,モレリやロダルチックによって得られた,非特異射影的トーリック多様体に関する弱分解定理の再証明がある.しかも,この手法の良いところは,実際に2つの非特異射影的トーリック多様体が与えられたとき,それらを結ぶ同変ブロー・アップ,同変ブロー・ダウンの列が明白に計算出来ることである. 以上得られたことは,本研究のテーマである中間次元サイクルのトーリック森理論が,現状非特異射影的トーリック多様体に対してしか上手く行っていないことを打破出来るものだと思われるので,この理論の研究も行なっていきたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画からは多少ずれた形ではあるが,非特異射影的トーリック多様体のカテゴリーでトーリック森理論を行えるかもしれない,という事実は,更に高次のサイクルでトーリック森理論を構築する際の一つの指針を与える結果だと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた結果のように,通常のトーリック森理論を再考察することも大事であることが分かったので,その方面の研究も行なっていく.また,今年度も研究はあまり進まなかったが,トーリック多様体上のベクトル束の研究に関する部分が本研究の鍵になるはずであるので,今後も大きな課題として研究していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度得られた結果は現在論文作成中であるので,引き続きそれを行う.また,非特異射影的トーリック多様体のカテゴリーで研究を行う場合,コンピュータ等にも計算が乗りやすいので,積極的に利用していきたい.更に,引き続きベクトル束やMMPの専門家との研究打ち合わせや講演会にも参加していく.
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