研究課題/領域番号 |
23540065
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
山口 佳三 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00113639)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | パラボリック幾何学 / 単純階別りー環 |
研究概要 |
この研究の目的は、大きく分けて2つからなる。1つは、微分式系の概念を通して、微分方程式系を幾何学的(接触幾何学的)に研究することであり、もう1つは、パラボリック幾何学(すなわち、単純階別リー環に付随する幾何構造)の研究であり、その前者への応用を諮ることである。 今年度は、後者のパラボリック幾何学を取りあげ、つぎのような結果を得た:パラボリック幾何学のモデル空間は、R-空間と呼ばれる等質空間 M = G/P である。ここに G は単純リー群であり、P は G のパラボリック部分群である。G のリー環を g とするとき、P に対応する部分リー環 p を与えることと g に階別リー環の構造(g = g_{-k} +・・・+ g_k)を与えることは等価である(この時 p = g_0 +・・・+ g_k)。さらにこの階別リー環の構造は(複素リー環) g に対応するディンキン図形 X_n の頂点の部分集合 D_1 を定めることで与えられる。このとき、階別リー環 g = g_{-k} +・・・+ g_k の深さ k が2以上ならば、g_{-1} が定める M 上の G 不変微分式系 D に対して、g の負のパート m = g_{-k} +・・・+ g_{-1} は微分式系 D の表象代数となっている。これに対して、我々は、g が古典単純リー環の場合に、深さが2であり、D_1 が1つの頂点からなる階別リー環の m = g_{-2} + g_{-1} の構造を具体的に記述し、対応する標準微分式系を座標表示した。 この結果は、佐藤肇氏との共著論文(Lie tensor product manifolds)として公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の前者に挙げた微分方程式系の接触幾何学的研究において、reductionの過程の後にパラボリック幾何学に帰着される微分方程式系を具体的に記述するには、今年度得られた標準微分式系の具体的な座標表示が必須の道具立てとなる。この意味で、研究計画達成に向けて、概ね順調に進展していると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度には、2階偏微分方程式系の接触幾何学における2段階 reduction の過程を PD 多様体、および IG 多様体の概念を用いて定式化したい。ここに、PD 多様体の概念は、幾何学的な1未知関数2階のジェット空間である接触多様体 J 上の Lagrange Grassmann 束 L(J) の部分多様体を特徴づけるものであり、IG 多様体の概念は、接触多様体 J 上の Coisotropic(Involutive) Grassmann 束 I_r(J) の部分多様体を特徴づけるものである。 この2段階 reduction の過程を通して、パラボリック幾何学に帰着される微分方程式系を今年度の成果を応用して明らかにしたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
節約したために生じた23年度未使用額は、主に、海外(Minneapolis, U.S.A., Auckland,New Zealand 等)の研究者との研究打ち合わせに使用する。
|