研究課題/領域番号 |
23540066
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
塩谷 隆 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90235507)
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研究分担者 |
藤原 耕二 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60229078)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 測度集中 / 曲率次元条件 / リッチ曲率 / ラプラシアンの固有値 / レビ族 / 測度距離空間 |
研究概要 |
当該年度の成果として、曲率次元条件(リッチ曲率の下限条件を測度距離空間へ一般化したもの)がオブザーバブル距離に関する収束で安定であることを証明した。この成果は測度集中の幾何学的研究においての中心的な定理として重要である。この定理の系として、非負リッチ曲率をもつ閉リーマン多様体の列について、そのラプラシアンの第k固有値が無限大へ発散することと、その列がレビ族であることが同値であることが分かった。さらに、任意のkに対してある定数C(k)が存在して、任意の非負リッチ曲率をもつ閉リーマン多様体のラプラシアンの第k固有値が第1固有値のC(k)倍以下であることが従う。これらの結果は当初の研究計画を大きく越える成果である。さらに、アレクサンドロフ曲率の非負性がオブザーバブル距離に関する収束で安定であることを証明した。この系として、非負曲率をもつアレクサンドロフ空間の列について、そのラプラシアンの第k固有値が無限大へ発散するならば、その列がレビ族であることを証明した。これらの成果を国内外のいくつかの研究会などで発表し、非常に好意的なコメントを多数いただいた。Gromovの測度集中の幾何学的理論の解明について、少し進展があった。測度距離空間全体の空間をピラミッドの空間へ埋め込めること、およびその埋め込み写像が測度距離空間全体の空間のオブザーバブル距離に関する完備化へと延びることについて考察し、証明の目処をつけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で説明したように、当初、難問と考えられていた曲率次元条件の安定性の証明に成功した。これに付随して、ラプラシアンの固有値についての予想をすべて肯定的に解決することができた。これは予定していた研究計画を大きく越える成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、Gromovの測度集中の幾何学的理論の解明を進める。具体的には、測度距離空間全体の空間をピラミッドの空間へ埋め込めること、およびその埋め込み写像が測度距離空間全体の空間のオブザーバブル距離に関する完備化へと延びることの詳細な証明をつける。さらに、閉リーマン多様体の列について、ラプラシアンのスペクトルの条件から、その列がオブザーバブル距離についてのコーシー列となることを証明する。また消散現象についても研究する。研究計画にある測度距離空間のリッチ曲率についてだが、共同研究者の Jianguo Cao 教授が肝臓癌で亡くなったため、計画の変更が必要となった。現在、私の指導する大学院生と共にサブ・リーマン多様体の分割定理を測度距離空間へ拡張できないかを考察している。そこでは、測度距離空間のリッチ曲率が鍵となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成23年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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