研究課題/領域番号 |
23540067
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
三上 健太郎 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70006592)
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キーワード | シンプレクティック / ポアソン / コホモロジー群 / ゲフフアント・フックス / 同変運動量写像 / 表現論 / クリスタルベース |
研究概要 |
本研究の目的は、無限次元リー環のコホモロジー群のうち.シンプレクティック(斜交)/ポアソン多様体のハミルトンベクトル場の成す無限次元リー環の斜交同変ゲルファント・フックスコホモロジー群を詳細に調べる事である。 森田茂之氏等は arXive:0911.3414, Oct 2009 に於いて、2次元斜交ベクトル空間の場合に、ウエイト10まで調べたのに対し、三上等は18まで決定し、更に50までは全ての余鎖体の次元とオイラー特性数を決定した。この結果は Mikami, Nakae, Kodama: Higher weight Gel'fand-Kalinin-Fuks classes of formal Hamiltonian vector fields of symplectic R^2, arXiv:1210.1662, Oct 2012 として上奏した。 今年度は4次元の場合を研究した。2から4にして起こる困難さは変数の増大の他に、2次元の場合のクレブッシュ・ゴルダン法則に比し、テンソル積の既約分解に Littlewood-Richardson 規則と、特殊化アルゴリズムを使う必要があることで、ウエイト 2,4,6 の結果を得ているのみである。この結果は、Mikami, K., Nakae, Y., Lower weight Gel'fand-Kalinin-Fuks cohomology groups of the formal Hamiltonian vector fields on symplectic R^4, arXiv:1211.0185, Nov 2012 として上奏した。2012年11月1日に東京大学玉原国際セミナーハウスでの国際研究集会「Foliations and Diffeomorphism Groups 2012」で発表した(招待講演英語50分)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度報告書の「今後の研究の推進方策等」に記したように, 今年度は4次元シンプレクティック(斜交)ベクトル空間の場合を研究した。2次元から4次元にして起こる困難さは単に方程式を解く際の変数の劇的な増大に限らず、2次元の場合にクレブッシュ・ゴルダン法則が成立するのに比し、4次元では2個の既約表現のテンソル積の既約分解に Littlewood-Richardson 規則と、特殊化アルゴリズムを使う必要があり、ウエイト 2,4,6 の結果を得ている。この結果は、K. Mikami, Y. Nakae, Lower weight Gel'fand-Kalinin-Fuks cohomology groups of the formal Hamiltonian vector fields on symplectic R^4, arXiv:1211.0185, November 2012 として公開した。2012年11月1日に東京大学玉原国際セミナーハウス(群馬県)での国際研究集会「Foliations and Diffeomorphism Groups 2012」で招待講演として口頭発表(50分, 英語)した。更に J. Math. Sci. Univ. Tokyo Vol. 19 (2012) pp.699--716 にて発行された。 2次元斜交ベクトル空間の場合の2種類のハミルトンベクトル場の成す無限次元リー環(定ベクトル場を除外した部分リー環を考える)の斜交同変ゲルファント・フックスコホモロジー群の間はあるウエイトの場合、同型であるとの森田茂之氏の予想に肯定的な解答を与え、Conjecture about Metoki class, Morita conjecture about Metoki class なる題で、秋田カレッジプラザと慶応義塾大学で口頭発表した。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度研究した4次元シンプレクティック(斜交)ベクトル空間の場合の困難さは, 変数の増大の他に、2次元の場合のクレブッシュ・ゴルダン法則が使えず、4次元ではテンソル積の既約分解に Littlewood-Richardson 規則と、特殊化アルゴリズムを使う必要がある事で、ウエイト2,4,6の結果を得たのみである。最近 テンソル積の既約分解に、クリスタル・ベース理論を活用することを発想し, C型単純リー環のクリスタル・ベース作成及びテンソル積の既約分解の数式処理ソフトを開発中である。このアイデアと数式処理ソフトを使って, 4次元斜交ベクトル空間の場合にウエイト8,10の新たな結果を得ている。 この手法は6次元斜交ベクトル空間の場合にも適用可能と思われるので, 今後は主に, 未知の領域である6次元斜交ベクトル空間のハミルトンベクトル場の成す無限次元リー環の斜交同変・双対ゲルファント・フックスコホモロジー群の研究を推進したい。 6次元斜交ベクトル空間の場合、4次元と比べ処理の負荷がどの程度増加するか具体的な例で示すと次の様になる。3次同次多項式のハミルトンベクトル場の6次交代形式の作る空間の次元は、ベクトル空間が4次元の場合38,760次元であるが、6次元空間の場合は、32,468,436次元となりこのデータを最初に計算機に読み込む時点で困難に直面する。そこで、データを分割して読み込むとか既約分解に現れる型を事前に調べ、その型に影響する6次交代形式だけを集める等の工夫をしている。6次元空間の(0,0,0)型、即ち自明表現に関わる6次交代形式の次元は204,894次元となる。この様に計算機の物理的な制約はあるが、数式処理ソフトのアルゴリズムの改良・工夫を粘り強く進める事は可能であり又必要であると思われる。注意深くこれまでの研究活動を反省しつつ、斬新なアイデアを模索したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
ある独立行政法人の委員(2年目)で15回の出張(各回とも4泊5日)で、出張計画をたてるのに不自由し, 出張の時間を十分に確保出来ず旅費を予定どおり使用出来なかった。次年度は、最終年度でもあるので成果を広く知って貰うためにも外国を含めて積極的な研究発表活動を強めたい。 6次元シンプレクティック(斜交)ベクトル空間の場合、2次元4次元と比べ処理対象がどの程度増加するか、上の「今後の研究の推進の方策」の欄でも具体的な例として述べたが再度強調する。3次同次多項式のハミルトンベクトル場の6次交代形式の作る空間の次元は、斜交ベクトル空間が4次元の場合38,760次元であるが、6次元斜交ベクトル空間の場合は32,468,436次元となりこのデータを最初に計算機に読み込ませる時点で困難に直面する。上でも述べたように , データを分割して読み込むとか既約分解に現れると予想される型を事前に調べた上でその型に影響する6次交代形式だけを集める等の工夫を重ねている。6次元ベクトル空間の場合の、(0,0,0)型、すなわち自明表現へ関与しそうな6次交代形式の次元は204,894次元となり, (1,1,0)型の場合は179,920次元となるなど, サイズを劇的に減らす工夫を考案しつつある。この様に開発中の数式処理ソフトのアルゴリズムの改良・工夫を粘り強く進める事は当然必要であるが、一方この様な超弩級の重い計算に耐えられる超高性能のコンピュータを複数購入することを計画中である。
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