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2014 年度 実施状況報告書

シンプレクティック多様体への群作用と量子化

研究課題

研究課題/領域番号 23540072
研究機関明治大学

研究代表者

今野 宏  明治大学, 理工学部, 教授 (20254138)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2017-03-31
キーワード微分幾何学 / シンプレクティック幾何学
研究実績の概要

量子化の研究については,Hamilton 氏との共同研究がようやくJournal of Symplectic Geometry に出版された.シンプレクティック多様体を幾何学的量子化する際に偏極という概念が必要であるが,複素構造の定める偏極(ケーラー偏極)や,純粋にシンプレクティック幾何的な偏極(実偏極)が知られている.古典論的な観察から,一般に実偏極はケーラー偏極の列の極限,すなわち複素構造の退化をシンプレクティック幾何において定式化したものであることが期待される.Hamilton 氏との共同研究では,旗多様体上ではケーラー偏極が実偏極に古典論的に収束していれば,量子論的にも収束していることを観察した.アイディアは素朴であるものの,技術的に多くの困難があり解決に時間がかかったが,ようやく最終的な成果をまとめ,出版することができた.
ケーラー多様体に複素リー群の作用があるとき,安定,半安定,不安定点という概念が定式化される.これらは,モーメント写像のノルムの2乗の勾配流と密接に関係する.一方,ラグランジュ平均曲率流というカラビヤウ多様体におけるラグランジュ部分多様体の体積汎函数の勾配流とラグランジュ部分多様体の安定性は上記の関係性の無限次元における類似物であると期待される.この期待は以前よりあり,平均曲率流の技術的な理由からなかなか研究が進まなかったが,その技術的側面が次第に進歩してきた.昨年度の実績報告において記載したように,本年度より本格的に平均曲率流の調査,研究を開始した.まず,平均曲率流の解の特異点の解析について調査した.とくに,I型の特異点の解析およびWhiteの正則性定理を精査した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

量子化の研究については,論文が出版され,最終的な形で成果が公表できて目的は十分に達成された.もうひとつの研究については昨年度の実績報告に記載したように研究計画の変更が余儀なくされた.ケーラー多様体に複素リー群の作用があるとき,安定,半安定,不安定点という概念が定式化される.これらは,モーメント写像のノルムの2乗の勾配流と密接に関係する.その結果,複素幾何における商空間とシンプレクティック幾何における商空間が一致し,モーメント写像のノルムの2乗をモース関数とみなすことにより商空間のトポロジーを調べることが可能になる.当初はこれらの超ケーラー版を研究することが大きな目標であったが,超ケーラー商のトポロジーの決定的な性質が,上記とはまったく別の手法により証明されてしまった.一方,ラグランジュ平均曲率流というカラビヤウ多様体におけるラグランジュ部分多様体の体積汎函数の勾配流とラグランジュ部分多様体の安定性は上記の関係性の無限次元における類似物であると期待される.昨年度の実績報告において記載したように,本年度より本格的に平均曲率流の調査,研究を開始した.まず,平均曲率流の解の特異点の解析について調査した.とくに,I型の特異点の解析およびWhiteの正則性定理を精査した.精査は順調に進んでいるが,まとまった研究成果は得られておらず,研究は全体としてやや遅れていると考えられる.

今後の研究の推進方策

平均曲率流の解の特異点の一般論を構築することが大きな目標であるが,そのためにまず具体例を構成し,それを解析することが重要になる.とくに,ラグランジュ平均曲率流については例があまり知られておらず,この問いは重要になる.
HaslhoferとKleinerによりmean convex曲面の新しい解析法が発表された(プレプリント).この方法は従来のものを簡略化するのにとどまらず,統一的な手法を与えるという点で有効と思われる.この方法,およびその修正がラグランジュ平均曲率流の解析に応用できるかどうか考察する.
平均曲率流の解析には,大きく分けて3種類の方法がある.ひとつは,部分多様体を写像と考えるパラメトリックな方法,2つめは部分多様体をある関数の等高面とみなす方法,3つめは部分多様体を分布と考えるBrakkeの方法である.はじめの2つの方法について調査を行ったが,3つめの方法についてはもう少し調査が必要である.
超ケーラー商の位相については,超ケーラーモーメント写像を解析する我々の研究計画とは全く異なる手法で研究が進んだ.超ケーラーモーメント写像は,その臨界点の非コンパクト性のため,解析することが難しい.平均曲率流の解の特異点が非コンパクトのときにも解析することが困難であったが,近年ColdingとMinicozziによりある場合に解決された.この方法を修正して超ケーラーモーメント写像を解析することもとても重要な課題と考えられる.

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が,前年度未使用額から増額している.前年度未使用額が生じた理由は,昨年度にも記載したように,研究代表者が2013年4月に研究機関を異動して,新たな研究機関においてさまざまな新しい業務が生じたため,研究時間を十分に確保できなかったことによる.次年度使用額が,前年度未使用額から増額している理由は以下に説明するように,単に見かけ上のことである.というのは,研究代表者は2015年3月に筑波と大阪に出張したが,その経費は翌年度の会計にまわされて,上記の当該年度の支出額に計上されていない.さらに研究代表者は研究図書の購入を計画したが,納入時期が3月中にすむか不確定だったため,購入を次年度にずらすことにした(4月初旬に購入済).これらを合わせると,研究計画はほぼ実行されて,支払請求額(f)はほぼ使い切ったことになる.

次年度使用額の使用計画

前年度に引き続き,研究費の70パーセント近くを旅費として予定している.昨年度の経験をふまえ,可能な限り綿密なスケジュールの調整を行っている.7月には,札幌(多階層解析と帰化解析の夏の学校),8月には名古屋(トポロジーシンポジウム)等への出張を計画している.(ただし,研究会が重複しているので,研究会の内容が確定した際には変更の可能性がある.)

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Convergence of Kahler to real polarizations on flag manifolds via toric degenerations2014

    • 著者名/発表者名
      M.Hamilton, H.Konno
    • 雑誌名

      Journal of Symplectic Geomtery

      巻: 12 ページ: 473-509

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.4310/JSG.2014.v12.n3.a3

    • 査読あり / 謝辞記載あり

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公開日: 2016-05-27  

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