研究課題/領域番号 |
23540076
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森藤 孝之 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90334466)
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キーワード | 結び目群 / 指標代数多様体 / ねじれアレキサンダー不変量 |
研究概要 |
本研究の目的は,結び目群の指標代数多様体とその上の関数であるねじれアレキサンダー不変量の情報を用いて,結び目およびその外部空間の幾何学的情報を,ある種の「有限性」で捉える枠組みを与えることである.より具体的には,結び目群のSL(2,C)-指標代数多様体の適当な複素1次元既約成分(代数曲線)と,結び目のファイバー性(あるいは種数)を特徴づける代数曲線との交差を考察し,それら交差数の有限性によって,結び目のファイバー性(あるいは種数)を決定する手法を開発することを目標とする.大別すると次の2点を明らかにすることが目標となる. 1.SL(2,C)-指標代数多様体上の関数としてのねじれアレキサンダー不変量の明示公式を与える. 2.得られた関数の性質と結び目のファイバー性および種数との関係を明らかにする. 上述の研究目的に対して,平成23年度に得られた結果を基にして,本年度は1.と2.の橋渡しに係る部分に焦点を絞って研究を行った.特に,2橋結び目の一種である3次元球面内の双曲的ツイスト結び目と呼ばれる重要な結び目のクラスに対して,Dunfield,Friedl,Jacksonの3氏によって提唱された予想(DFJ予想)を肯定的に解決することに成功した.この予想は,それ自身解決が望まれる大変重要なものであるが,さらに本研究との関わりで見てみると,DFJ予想から上記2.の一つの定式化が直接導かれるという意味において,興味深い成果と言える.また,Friedl-Kim-Kitayamaによるねじれアレキサンダー不変量の次数のパリティに関する結果の最善性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結び目理論の代数的研究における「2橋結び目」や「双曲的ツイスト結び目」の位置づけは極めて重要で,これに対して研究目的がおおむね達成できたことは,さらなる一般化に向けて,よい指針を与えるものと考えられるため.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題最終年度の今年は,平成24年度までに得られた結果を基にして,前項2つの具体的目標のうち,2.に焦点を絞って研究を行うことにする.より具体的には,2橋結び目とは限らない3次元球面内の結び目に対して,これまでに得られている結果を一般化すること,特に,「小さい結び目」と呼ばれるクラス(外部空間に本質的閉曲面を含まない)について,詳細に考察を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の早い時期から,結び目群の指標代数多様体上の関数としてのねじれアレキサンダー不変量の性質について,得られた成果を取りまとめ,成果の発表を行うこととする.特に,本研究課題遂行中に定期的にレビューを受けているフランス・トゥールーズ大学のMichel Boileau教授に最終的なレビューを受ける予定である. 上述の研究の推進方策を実行するにあたり,関西・九州地区の専門家から専門知識の提供を受けるための国内出張旅費,最新の研究動向を調査するための外国出張旅費ならびにフランス・トゥールーズへの外国出張旅費として700,000円を計上する.また,研究成果を取りまとめ,発表する際に必要な機器等を購入するための物品費100,000円,本学に専門家を招いて専門知識の提供を受けるための謝金として50,000円を計上する.
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