研究課題/領域番号 |
23540080
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中川 泰宏 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (90250662)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | Einstein・Kaehler 計量 / 幾何学的不変式論 / 安定性 / Kaehler・Ricci ソリトン / Kaehler・Ricci 流 |
研究概要 |
これまでの研究に引続き,偏極代数多様体の幾何学的不変式論の意味における安定性と定スカラー曲率 Kaehler 計量の存在とが同値になるという予想,いわゆる「偏極代数多様体に対する小林・Hitchin 対応」を中心に研究した. 特に本年度は主に Einstein・Kaehler 多様体上のトーリック多様体をファイバーとするある種の空間(いわゆるトーリック多様体束)上の Einstein・Kaehler 計量の一般化である Kaehler・Ricci ソリトンの存在問題を考察した.この問題は,Wang・Zhu によるトーリック Fano 多様体上の Kaehler・Ricci ソリトンの存在定理の相対化あるいは高次元化にあたる問題である.Wang・Zhu の議論と同様の議論が展開できそうな状況設定をうまく定めることには成功した.さらに,その状況において解くべき方程式を具体的に書き下すことにも成功した.しかし,いくつかの問題を解決することができないため現時点では方程式を解くことには至っていない. また,昨年度までの研究で構成した Einstein・佐々木多様体の新しい例において体積最小化の問題も考察した.この問題は理論物理学において注目され底る AdS/CFT 対応に関連した重要な問題である.体積の計算には成功したはずなのであるが,体積最小化の問題とうまく適合していない.よって,どこかが間違っているはずなのであるが,今のところ問題は解決していない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トーリック多様体束上での Kaehler・Ricci ソリトンの存在問題において具体的に方程式を書き下すことまでは成功したのであるが,考える関数空間を小さくしているので,その関数空間の中で解を構成することができることをうまく示せていないので,トーリック多様体束上での Kaeher・Ricci ソリトンの存在を示すことに成功していない.
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今後の研究の推進方策 |
まずはトーリック多様体束上での Kaeher・Ricci ソリトンの存在問題の解決を目指す.具体的には,考えている関数空間での解析学的手法を整備してやることにより解決を目指す. 次に Kaehler・Ricci 流の観点から,偏極代数多様体(特に Fano 多様体)に対する小林・Hitchin 対応を考察していきたい.Kaehler・Ricci 流の観点から Fano 多様体の安定性に関する考察をした研究はあまり知られていないようである.しかし,「正則ベクトル束に対する小林・Hicthin 対応」の解決が熱流の方程式を用いていたことや,Cao による Ricci 曲率が負または零の時の Einstein・Kaehler 計量の存在の Kaehler・Ricci 流を用いた証明などからも,この観点で大きな結果が得られることは十分期待できそうである.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で考察する種々の問題はどれも多分野,特に代数幾何学・複素微分幾何学および解析学(特に偏微分方程式)にまたがっており、多様な情報を収集するためにも,幾何学関係・代数学関係及び解析学関係の書籍を必要とする.また,これらの研究テーマはここ数年で急速に発展してきている.そこで,最新の結果を収集するために,国内外の研究集会に参加する必要がある. よって,2012 年度は,物品費:400,000 円,旅費:500,000 円,人件費・謝金:100,000 円,の使用を予定している.
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