研究概要 |
本研究は, 超平面配置に対するSalvetti複体の構成を一般化することが, 一つの目的である。そのために, cellular stratified spaceの概念を, Basabe, Gonzalez, Rudiyakとの共著で平成22年度に導入し, 正則な場合にhigher symmetric topological complexityへの応用を得た。平成23年度は, cellular stratified spaceの理論を正則でない場合に発展させることを主目的に研究をすすめた。その結果として, 正則の条件を弱めた条件として, cylindrically normalという条件そしてlocally polyhedralという条件を得た。そしてそれらの条件の下に, Basabeらとの共著で得られた結果を拡張することに成功した。具体的には, cylindrically normal cellular stratified space Xに対し, topological category C(X)を構成し, その分類空間BC(X)がXに埋め込めることを示した。また, 更にlocally polyhedralの条件をみたせば, BC(X)がXの変異レトラクトになることも示した。結果は, 二つの論文としてまとめarXivで公開している。また学術雑誌にも投稿済みである。この結果は, Salvetti複体の構成の大幅な一般化になるもので, 様々な分野に応用できる可能性を秘めている。実際, グラフの配置空間への応用が得られ, その結果は平成23年9月に博多と神戸で行なわれた応用トポロジーの国際会議で招待講演として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書の「研究計画・方法」では, 合計10の課題を挙げ, その内平成23年度に解決するものとして課題1~4を挙げた。その中の課題1~3, つまり (1) cellular stratified spaceのface categoryを定義すること, (2) 分類空間とのホモトピー同値を証明すること, (3) 補集合がcellular stratified subspaceになる条件を求めること, は, 計画通り平成23年度に解決できた。課題4は, 超平面配置に関する具体的な問題であるが, 今年度は一般論を整備することに集中したためそれには手をつけていない。しかしながら, 課題5~10の内, 課題7と8, つまり (7) face categoryの定義をtopological categoryとして拡張すること, (8) その分類空間が元のcellular stratified spaceとホモトピー同値になることを証明すること, は平成23年度に解決された。また, 課題9, つまり (9) 多様体上のMorse-Smale関数からcellular stratified spaceを作りそのface categoryがCohen-Jones-Segalの構成と一致することを示すこと, は大学院生の田中康平君との共同研究で解決した。更に, 最後の課題10, つまり (10) discrete Morse theoryをtopological acyclic categoryに拡張することも, 平成23年度中にRutgers大学のVidit Nanda氏, 田中康平君との共同研究として研究が開始された。
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今後の研究の推進方策 |
9月に博多と神戸の応用トポロジーの国際会議へ招聘され講演を行なったことにより, より応用トポロジーへの応用も考えていきたい。もちろん, 幾何学やトポロジーへの応用も考えていく。そのため情報収集が必要となるので, 積極的に研究集会, 特に国際的な会議に参加して, cellular stratified spaceの理論が応用できる課題を模索していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
できるだけ幅広い分野の情報収集を行なうため,研究集会への出席および研究者を訪問あるいは招聘して議論するための旅費に, できるだけ多く研究費を使う。交付申請書では, 平成24年度には研究の中間まとめとして研究集会を開催するために研究費を使う旨書いたが, cellular stratified spaceの概念が予想外に多くの分野に関連していることが分かってきたため, まず関連している分野をできるだけ多く見つけ, それらの分野の研究者と議論することが必要と判断した。その結果をふまえ, 平成25年度以降に研究者を集め研究集会を行ないたい。次年度に繰り越した研究費は, そのための旅費に使う。
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