研究概要 |
平成24年度は, まず前年度に導入した cellular stratified space の理論を一般化し, 適用範囲を広げることを行なった。最も重要な性質である, face category からのホモトピー型の復元を証明するために本質的な性質を考察した結果, cellular stratified space を topological category 上の関手とみなし, そのホモトピー極限を考えるという発想を得た。そして, ホモトピー極限に関する一般的な事実を用いることにより, cellular stratified space のホモトピー型が, face category の分類空間として得られることの証明を大幅に簡略することに成功した。また, 前年度までに得ていた証明は, 具体的なホモトピーを構築することによるものだったため, PL条件などが必要であったが, このホモトピー極限を用いた証明により, その条件も不要になった。 次に, その cellular stratified space の応用として, グラフの配置空間の基本群, および cellular stratified space 上のファイバー空間のホモロジーを考えた。グラフの配置空間については, 修士課程の学生であった向山貴志君との共同研究で, 頂点が高々2個の グラフの2点 配置空間のホモトピー型を決定し, その基本群の表示を求めた。Cellular stratified space 上のファイバー空間のホモロジーについては, ファイバー束の場合に, 従来の Serre スペクトル系列を精密化するスペクトル系列を構成した。それにより, 例えば球面の自由ループ空間のホモロジーの新しい計算法を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究計画には10個の課題を挙げた。その中で, 5つの課題, 「cellular stratified spaceのface categoryを定義する」「face categoryの分類空間と元のcellular stratified spaceのホモトピー同値を示す」「cellular stratified spaceの補集合がcellular stratified spaceになる条件を求める」「face categoryの定義ををtopological categoryに拡張する」「拡張されたface categoryでホモトピー同値を示す」が解決された。また2番目の課題については, 平成23年度に解決していたが, 平成24年度に別証が得られ, そのことにより結果が大きく改良された。 残る5つの課題の内, 「多項式の成す空間への応用」と「実射影空間の配置空間への応用」は, cellular stratified space の一般論が応用できるであろう具体的な課題として挙げたものであるが, これらの2つの課題の代わりに, グラフの配置空間を具体的な課題として考え, 頂点が2個以下のときにそのホモトピー型を決定した。 残る3つの課題の内, 「Cohen-Jones-SegalのMorse理論の離散版の証明」についてはベンシルベニア大学のVidit Nanda氏と信州大学の田中康平氏との共同研究が進んでいる。 以上により, 研究はおおむね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き, cellular stratified space の理論を発展させる。そのためには, 具体例をできるだ多く調べることが重要である。よって, 次のことを行なう: (1) 球面の配置空間の cellular stratification を詳しく調べる。(2) グラフの配置空間への応用を発展させる。球面の配置空間は, この研究の端緒となったものである。その構造を更に詳しく調べることにより, cellular stratified space の理論の精密化および, より一般の配置空間への応用の道が開けると考える。グラフの配置空間については, 平成24年度から研究を始めたものであるが, cellular stratified space の理論が有用であることが確認できたので, その研究を推進する。 また, 平成24年度に研究を始めた cellular stratified space 上のファイバー束に関する結果を, ファイバー空間に拡張することにより, cellular stratified space の応用範囲を広げる。
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