研究課題/領域番号 |
23540082
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
玉木 大 信州大学, 理学部, 教授 (10252058)
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キーワード | stratified space / small category / configuration space / classifying space |
研究概要 |
本研究は, Basabe, Gonzalez, Rudyak の三氏との共同研究で導入した cellular stratified space の理論を発展させることが目的である。平成24年度までの研究では, 実超平面配置の複素化の補集合のホモトピー型を表わす Salvetti 複体の構成を, regular, totally normal, cylindrically normal と次第に条件を緩めた場合に一般化したが, その際に鍵になっていたのが, それぞれ poset, acyclic small category, acyclic topological category という圏論的構造を対応しているという事実だった。平成25年度は, その更なる一般化を行なうと同時に, 平成24年度までに得られた結果の具体的な問題への応用に取り組んだ。 まず, 一般化としては, Basabe 氏らとの共同研究で cylindrically normal でも扱えない例が発見されたので, それを取り扱うための圏論的構造として parametrized functor という概念を導入し, そのホモトピー極限などの理論を開発した。 応用としては, グラフの2点配置空間のホモトピー型, そしてその基本群の決定に totally normal cellular stratified space を用いることを考えた。グラフの本質的な頂点の数が2個以下の場合については, 古瀬氏と向山氏との共同研究でそのホモトピー型のモデルが得られていたが, それを一般の場合に拡張した。 これらの結果については, 三ヶ所の国際会議 (ポーランド, 島根大学, 北京) で発表した。グラフの配置空間の結果については, 論文としてまとめ学術雑誌に投稿済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の研究計画には理論面で5, 応用面で5の研究課題を挙げた。その内, 理論面については全ての課題が解決されたが, 応用面の研究を行なっていく内に, 理論面で挙げた5つの課題を解決するだけでは, 不十分であることが分かった。交付申請書作成時では, topological category と continuous functor に理論だけで全ての場合を扱えると考えていたが, 球面の配置空間などの場合にそれでは不十分であることが分かり, そのような場合を扱うための圏論的構成が必要であることが分かったのである。幸い, そのような圏論的構造とその理論面の研究は平成25年度までにほぼ目処が立ったので, 今後は応用面の課題に集中して研究できることになった。 このように, 応用面の研究課題には未解決のものが残されているが, 理論面で予想外の進展があったため, 総合して「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究により, 交付申請書の計画と大きく異なるようになった点は, topological category の一般化が必要になったことである。Topological categoryの分類空間やその上の continuous functor のホモトピー極限の理論などは古くから知られているが, 配置空間を cellular stratified space を用いて研究するためには, それでは不十分であることが, 平成25年度の研究で分ったのである。そこで parametrized functor の概念を導入しそのホモトピー極限の理論を, 平成25年度に構築した。 平成26年度は, その理論を具体的な配置空間に応用すること, 特に球面の配置空間に応用することが研究の中心となる。具体的には, まずn次元球面k個の直積に, k点配置空間を stratified subspace として含むような cellular stratified space の構造を入れる。それを parametrized functor のホモトピー極限として表すことが次の段階である。それに成功すれば, ホモトピー極限のホモトピー不変性を用い, parametrized functor のホモトピーを作ることにより配置空間とホモトピー同値で, より次元の低いものが構成できる。目標は, その次元が (k-1)(n-1)+1 であるものを構成することである。 また, 球面以外の配置空間についても, できるだけ多くの例に cellular stratified space の理論を適用し, そのホモトピー型を調べる。それにより分かったことを cellular stratified space の理論にフィードバックする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画よりも安価で研究が遂行できたため, 次年度使用額が生じた。 平成26年度支払い請求額は1,000,000円であるが, 次年度使用額 2,820円との合計 1,002,820円は, 物品費 150,000円, 旅費 650,000円, その他 102,820円 として使用予定である。8月に国際数学者会議の衛星会議を中華人民共和国大連市で開催予定であり, そのための講演者を招聘する旅費を中心に使用する。
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