• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

クライン群の変形空間の境界挙動

研究課題

研究課題/領域番号 23540083
研究機関名古屋大学

研究代表者

糸 健太郎  名古屋大学, 多元数理科学研究科, 准教授 (00324400)

キーワード双曲幾何 / クライン群
研究概要

クライン群(3次元双曲空間の等長変換群の離散部分群)の変形空間について研究している.クライン群の変形空間は商多様体の理想境界に現れるリーマン面の変形空間と対応しており,私はこの対応の連続性・不連続性について研究している.その中でも,Kerckhof fとThurstonによって見出された「タイヒミュラー空間のベアスコンパクト化の基点に関する不連続性」の原理を明らかにすることを目標としている.
今年度も前年度に引き続き,1点穴あきトーラス群の空間のリニア・スライスについて研究した.とりわけ,トレースの値が2に近いときのリニア・ スライスが,ちょうど2の場合のリニア・スライス(マスキット・スライス)にどのように近づく/近づかないかを調べた.Bromberg は「穴あきトーラス群空間は局所連結でない」という結果を得ているが,彼がそこで導入した座標とトレース座標の関係を明らかにする形で,上述の結果を論文にまとめ投稿した.また,局所連結でないリニア・スライスが存在することも明らかにした.
一方で,2点穴あきトーラス群の空間の研究も行った.1点穴あきトーラス群空間は次元が低くKerchkoff-Thurston現象は観察されないのであるが,2点穴あきトーラス群空間の場合にはこの現象が観察されると期待される.手始めに2点穴あきトーラス群空間のマスキット・スライスの境界挙動について研究した.
さらに,1つ次元の高い4次元クライン群の研究もおこなった.以上の研究全体を通じて,クライン群の極限集合や変形空間のコンピュータグラフィックスを描かせることが重要であり,その方面にも努力した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

1点穴あきトーラス群の空間のリニア・スライスに関する論文を完成させ投稿したことは大きな進展である.技術的に難しい部分があり,執筆に予想以上に時間を費やす必要があった.
一方で,2点穴あきトーラス群をはじめ,一般のクライン群の変形空間におけるKerckhoff-Thurston現象についても本格的に研究を開始したが,まだ本質的な進展が得られないので,研究の進展は当初の計画よりはやや遅れている.

今後の研究の推進方策

Kerckhoff-Thurston現象の解明を軸に,とりわけ2点穴あきトーラス群に関する研究を推し進める.そのために,一般曲面に関する measured lamination, ending lamination 等に関する知識を増やし,Bers境界とThurston境界の違いを探求することも1つの目的である.また,本研究において,クライン群の極限集合や変形空間のコンピュータ・グラフィックスを得ることが本質的に重要であるので,そのための努力をしたい.

次年度の研究費の使用計画

2113年6月に東工大において,国際集会"Analysis and Geometry of Riemann Surfaces and Related Topics"を藤川(千葉大),小櫃(鹿児島大),田辺(東工大)と共同で開催する予定である.昨年度の繰越金は,この集会にDragomir Saric (CUNY)を招聘するために用いたい.
その他の研究費の使用目的は,基本的に昨年度と同様で,国内外の研究者との研究交流を行う旅費が主な支出となる.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Convergence and divergence of Kleinian punctured torus groups2012

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Ito
    • 雑誌名

      American Journal of Mathematics

      巻: 134 ページ: 861-889

    • 査読あり
  • [学会発表] On the topology of the space of Kleinian once-punctured torus groups

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Ito
    • 学会等名
      Aspects of representation theory in low-dimensional topology and 3- dimensional invariants (CNRS/JSPS joint seminar)
    • 発表場所
      Marseilles, France
    • 招待講演
  • [学会発表] Linear slices close to a Maskit slice

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Ito
    • 学会等名
      AMS Spring Central Sectional Meeting, Special Session on Analysis, Dynamics and Geometry In and Around Teichmuller Spaces
    • 発表場所
      Iowa State University, USA
    • 招待講演
  • [学会発表] Convergence and divergence of Kleinian punctured torus groups

    • 著者名/発表者名
      Kentaro Ito
    • 学会等名
      Complex Analysis and Dynamics Seminar at CUNY
    • 発表場所
      CUNY, USA
    • 招待講演
  • [備考] Kentaro Ito

    • URL

      http://www.math.nagoya-u.ac.jp/~itoken/index.html

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi