研究課題/領域番号 |
23540085
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 道彦 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60254231)
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研究分担者 |
上 正明 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80134443)
佐藤 隆夫 東京理科大学, 理学部, 講師 (70533256)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ブレイド群 / アルティン群 / 2面体型 / 増大関数 / オートマトン |
研究概要 |
研究代表者・藤井は、分担者・佐藤と共に、離散群のオートマティック構造の構成およびそれを用いての離散群の増大関数の計算を行うための準備的考察を行った。具体的には、2面体群型のピュア・アルティン群 P について、(1)ライデマイスター・シュライアー方法を用いての P の表示を求めた。(2)群 P に対するポジティブ・モノイド P+ が P に自然に単射で埋め込めることを示した。証明でポイントとなるのは、ブレイド群に対して、ガーサイドがポジティブ・モノイドの元のキャンセラティビティを示したのと同様の議論が2面体群型のピュア・アルティン群 P についても行える点である。さらに、この方法とはまったく異なる、群論的な証明も与えることが出来た。(3)ポジティブ・モノイド P+ の増大関数の有理関数表示を求めた。増大関数の係数の満たすべき漸化式を用いての P+ の増大関数の計算を行った。(4)ポジティブ・モノイド P+ の元を受理するオートマトンを作成することによって、P+ の増大関数の計算にも成功した。(5)(4)および(5)で求めることの出来たポジティブ・モノイド P+ の増大関数の有理関数表示について、数論の観点からの考察を行った。具体的には、増大関数の有理関数表示における分母の多項式の零点の分布を数式処理システム Mathematica を用いて調べた。そこで、1が零点であり、さらに 0 と 1 で挟まれる開区間の中に一つだけ零点が存在することが分かった。また、その他の零点はすべて、複素平面での単位円盤の外部に存在することも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、幾何学的に重要な離散群 Γ に対して、Γの幾何を適切に反映させるリー群 G を選んで、その変形空間 X = Hom (Γ,G) を研究することが目的である。特に、Γ として、(1)双曲群、(2)アルティン群について、変形空間 X の構造を解明することが目的である。平成23年度の研究では、(2)のアルティン群に関する研究は、比較的順調に進んだといえる。特に2面体群型のピュア・アルティン群については、研究の基礎固めがかなり出来たといえる。それに対して、(1)の双曲群に関する研究は、3次元球面内の 5-2 結び目の補空間の上の双曲構造の変形空間に関しるものに留まっている。その点で、現在の達成度としては「やや遅れている」を選んだ。
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今後の研究の推進方策 |
幾何学的に重要な離散群 Γ に対して、Γの幾何を適切に反映させるリー群 G を選んで、その変形空間 X = Hom (Γ,G) の構造を解明することを目指す。特に、Γ として、(1)双曲群、(2)アルティン群に的を絞って、変形空間 X の構造を考察していく。(1)の双曲群の場合は、3次元球面内の 5-2 結び目の補空間の上の双曲構造の変形空間のヤコビ多様体の加法構造を具体的に記述するところから研究を開始する。それをもとにして、変形空間 X の上の有理点の分布を考察する。(2)のアルティン群については、平成23年度の2面体群型のピュア・アルティン群 P に関する考察をさらに深めて、P の元の測地性のための十分条件を求めるところから研究を開始する。その十分条件をもとにして、P の元の測地的代表元を受理するオートマトンの構成を行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者・藤井は、分担者・佐藤および河澄との間で短期集中セミナーを適宜開催し、研究の進展具合を報告する。そのときに国内旅費を使用する。また、藤井は、平成24年7月に中国・昆明で開催されるカンファレンス「Group actions and applications in geometry, topology and analysis」に於いて、離散群のオートマティック構造と増大関数に関して、本研究の中間報告を行う。このときに外国旅費を使用する。
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