研究課題/領域番号 |
23540086
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮田 任寿 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30280390)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | シェイプ理論 / フラクタル幾何学 / 逆システム |
研究概要 |
シェイプ理論 (近似的逆システム (approximate inverse system) の理論など) を用いて,フラクタル幾何学へのカテゴリ的アプローチの方法と公理的アプローチの方法を解明することを目的とし,当該年度は,シェイプ理論の基礎的・応用的研究として,近似的逆システムなどの既存の技術や最近の技術について調査し,有用性を明らかにした.具体的には,下の2つのことについて取り組んだ. 1. 拡張問題は,位相空間の閉部分集合から,CW複体などの単純な空間への連続写像を空間全体へ拡張するという問題である.単純な空間の代わりに,一般的な位相空間を許すことができるかどうか,という問題に取り組んだ.シェイプ理論の逆システムの理論を応用し,すでに研究が進められている拡張理論を,値域が一般的な位相空間を含むような一般化された拡張理論を構築した.具体的には,CW複体を値域とする拡張型の概念を一般化して,一般的な位相空間を値域とする近似的拡張型という概念を定義した.拡張理論において,CW複体を値域とした拡張次元の概念を一般化し,finitisticな可分距離空間のクラスを値域とした近似的拡張次元の概念を構築し,距離空間のクラスを定義域とする近似的拡張次元が存在することを証明した. 2. 代数的位相論で知られているホモロジー分解(E. H. Brown and A. H. Copelandの意味で)を,シェイプ理論における逆システムを使って,シェイプカテゴリ上のホモロジー分解を得ることに成功した.具体的には,代数的位相論で知られているMoore空間の概念を拡張し,アーベル群からなる逆システムに対する近似的Moore空間の概念を定義した.さらに,ある条件を持つ1-シェイプ連結な連続体は,近似的Moore空間からなる分解列をもつことを証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年度は,シェイプ理論の基礎的・応用的研究として,近似的逆システムなどの既存の技術や最近の技術について調査し,有用性を明らかにすることを目標としてきた.これに対して,2つの大きな結果を得ることができた.1. シェイプ理論の逆システムの概念を応用した近似的拡張次元の理論の構築2. シェイプ理論の逆システムの概念を応用したシェイプ理論的ホモロジー分解の理論の構築 一方で,シェイプ理論の基礎的・応用的問題について調査すると,問題が多数の分野に拡散しており,さらなる調査を必要とする.
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今後の研究の推進方策 |
フラクタル幾何学へのカテゴリ的・公理的アプローチの方法に関する研究を行う.シェイプ理論の基礎的・応用的研究をもとに,フラクタルを対象とするカテゴリを構成し,フラクタル幾何学における既存の概念やフラクタルの幾何学的性質との関連について調べ,他分野への応用の可能性についても検討する.また,カテゴリ的手法によるフラクタルの表現方法に基づいてアルゴリズムについて検討し,必要に応じて,数式処理システムを用いて可視化を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年度の計画では,数式処理システムを購入する計画であったが,神戸大学が所有するシステムのサイトライセンスを使用することで,購入のための経費分の当該研究費が生じている. 2012年度以降の計画は次のとおりである.シェイプ理論,フラクタル幾何学,カテゴリ論をはじめ,位相幾何学を中心とした関連する文献を調べるため,Math Review,Zentralblatt Mathなどのデータベースを調べながら,神戸大学附属図書館で入手可能な学術雑誌については印刷をし,それ以外は文献複写により入手する.神戸大学附属図書館にない図書については購入する.神戸大学にてセミナーを開催し,それぞれの分野の専門家から専門知識の提供を受け,方針について検討した上で,問題について検討していく予定である.得られた結果は,プレプリントサーバ及び国際的な学術雑誌に投稿する.
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