研究課題/領域番号 |
23540087
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
小池 敏司 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (60161832)
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キーワード | SSP 幾何学(オーストラリア) / A'Campo 曲率隆起(オーストラリア) / 曲率集中化問題(オーストラリア、フランス) |
研究概要 |
本研究の研究課題名は解析的特異点の幾何であるが、特に2つの問題を中心課題として研究を進めている。昨年度はそのうちの一つである「SSP幾何学」について、その基礎付けとなる研究を行った。本年度はもう一つの課題である「解析関数の特異点のその周りのレベル集合族の曲率の情報を用いた幾何学的特徴付け」に関する研究を中心に行った。 本年度の研究は、研究代表者がオーストラリア・シドニー大学訪問中に、数学教室の T.-C. Kuo 教授と L. Paunescu 教授と一緒に行った多くの具体的な例の計算と考察から始まったものである。研究代表者のシドニー訪問、Paunescu 教授の兵庫訪問を通しての共同研究により、以下に述べる2つの研究成果を得た。 ・2変数複素解析関数の特異点の周りのレベル集合の族に、どこに A'Campo 曲率隆起が現れるかを判定する条件を定式化した。複素解析的特異点のトポロジーはこの曲率隆起により特徴付けられるので、意味のある結果と思われる。この結果については3人の共著論文として執筆し、現在、数学専門誌に投稿中である。 ・2変数解析関数の特異点の周りのレベル集合族の曲率集中化問題について考え、複素関数の場合には、曲率集中化が起こるための必要十分条件が、Kuo-Lu のツリーモデルに高さが1より大きいバーが現れることであることを示した。一方、実関数の場合には、曲率集中化を実ツリーモデルの言葉を用いてそのような特徴付けを与えることができないことを示す関数の例を構成した。これらの結果も3人の共著論文として書き上げ、数学専門誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2変数解析関数の特異点の周りのレベル集合族の曲率の情報から特異点の特徴付けを与える研究に対し、上記に述べたように、複素関数の場合の A'Campo 曲率隆起の特徴付けを与えたこと、また、曲率集中化をツリーモデルで特徴付けすることができるかの問題に対しては、実・複素の場合の両方ともに決着をつけることができた。これらの成果は、ほぼ予定どおりの進展である。
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今後の研究の推進方策 |
最初の年に行ったSSP幾何学の基礎付けを土台に、この幾何学をより理論的に発展させることを行いたい。また、SSP幾何学に関する結果に対する注意の多くが、螺旋曲線とジグザグ曲線を用いて構成された。このことから、SSP幾何学はそれらの曲線の幾何学に応用を持つように思われる。したがって、その応用についても研究を進めたい。 本年度に行った解析関数の特異点の周りのレベル集合族の曲率に関する問題で、実関数の場合の A'Campo 曲率隆起の出現の判定法の定式化がまだなされていない。複素の場合と比べて、実の場合は非常に複雑で難しいが、こちらの問題にも研究を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の大半は旅費に用いられる。本研究はオーストラリア・シドニー大学の2人の数学者との共同研究を中心としてなされている。そのための研究代表者のシドニー訪問のために海外旅費が、また、研究成果発表のための国内研究集会参加のために国内旅費が用いられる。 実の場合の A'Campo 曲率隆起の研究のためには、多くの特異点関係の専門的知識が必要になる。それらの専門的知識の提供を受けるために、謝金が用いられる。更に、螺旋曲線とジグザグ曲線への応用を考える上で、それらについての知識を知るための専門図書の購入のために設備費が用いられる。
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