研究課題/領域番号 |
23540096
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 好久 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (90231349)
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研究分担者 |
足利 正 東北学院大学, 工学部, 教授 (90125203)
廣瀬 進 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (10264144)
遠藤 久顕 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (20323777)
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キーワード | Lefschetz fibration / Lefschetz pencil / symplectic manifold / pseudoholomorphic curve / fibered complex surface / geography / Kodaira dimension |
研究概要 |
本研究の目的は、シンプレクティック構造をもつ4次元閉多様体上に自然に入るファイブレーション構造(レフシェッツファイブレーションやレフシェッツペンシル)を、シンプレクティックトポロジー的手法と代数幾何的手法を用いて解明することである。ケーラー構造を持つものについては当然ではあるが、シンプレクティック構造をもつものは複素曲面と似た性質を持ち、そのような対象を代数幾何的に研究することが必然的に考察される。すなわち、複素代数曲面での研究内容がどの程度、シンプレクティック4次元多様体についても成立するかどうかは、自然な研究問題である。当該研究課題では、複素曲面の代数幾何的研究と照らし合わせて非極小レフシェッツ束空間の「地誌学」を調べること、および、レフシェッツ束空間に「小平次元」の概念を導入し小平次元を軸とする分類を考察することを具体的な研究目的としている。 このような研究目的にそって、平成24年度の研究計画は、平成23年度の研究を継続して、シンプレクティックトポロジー的手法により擬正則曲線を解析しながらレフシェッツ束空間の標準類を決定すること、および、2重分岐被覆や写像類群によりレフシェッツ束空間を構成することである。標準類の決定は地誌学や小平次元の研究のための準備であり、レフシェッツ束空間の構成は地誌学研究の準備である。平成23年度の研究成果としては、先行研究を一般の種数へと拡張し、ある条件(例えば、十分に多くの自己交差数が-1の球面を含む)のもとでレフシェッツ束空間の標準類を決定し、地誌学や小平次元による分類をすることができた。この結果は Pacific Journal of Mathematics にて発表した。(DOI:10.2140/pjm.2013.262.191)更に、シンプレクティック小平次元と代数幾何的な飯高-小平次元の関係について研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レフシェッツ束空間の標準類の決定に関しては、ある条件のもとではあるが、その研究目的を達成し、それにより、その条件下での地誌学や小平次元の研究に応用することができている。このことは学術専門誌にて発表することができた。しかしながら、設定条件を外すための擬性正則曲線の特異点の解析がうまくできていない。これができれば、条件なしに非極小レフシェッツ束空間の標準類の決定を行うことができる。また、小平次元の研究に関しては、既存の小平次元の枠組みから抜け出るような研究ができず、本来の研究目的である小平次元の本質的な研究まで及んでいない。より大胆な研究、例えば、複素代数曲面論にて重要な多重標準写像の類似物をシンプレクティック4次元多様体に対して構成(定義)可能かどうかを検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究を継続しながら、当初の計画目標達成を目指す。平成23年度24年度の研究で得られた成果であるレフシェッツ束空間の標準類の決定は、ある条件下での決定である。したがって、残された課題として、この条件を「外す」ことを継続課題として考察しなければならない。そのために、標準類の(特異)擬正則曲線表現、特に、その特異点のまわりでの状況をシンプレクティックトポロジー的に精密に解析する必要がある。小平次元に関する研究では、正則レフシェッツ束空間の因子次元を計算しながら飯高‐小平次元として最良の因子を探す研究を行う。あるいは、別の方法として、複素代数曲面論にて重要な多重標準写像の類似物をシンプレクティック4次元多様体に対して構成(定義)可能かどうかを検討する。 次年度使用額(29,790円)が生じた理由は、当初予定していた研究打ち合わせが、大学の業務等のためにキャンセルしなければならなかったことである。これは、次年度(平成25年度)において研究打ち合わせのために使用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の領域は、微分位相幾何学・代数幾何学(複素曲面)・リーマン面の研究など広範囲におよぶ。そのための情報収集や研究交流は必要であり、研究集会や研究交流のための旅費として使用する。また、研究資料としての図書を購入する。
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