研究概要 |
連続関数族に対する拡張作用素の研究において, 扱う関数族の終域としてどのような空間を設定するのかという問題の枠組みの構築が必要である。この視点から, 以下の2つの成果を与えた。 実数値関数族の範疇を拡大したバナッハ束 (Banach lattice) を値にとる関数族に対し, 以下の定理を22年度までに得ていた。定理「Katetov-Tong の挿入定理の関数の終域「実数直線R」は自明でない可分なバナッハ束に置き換えられないが, Dowker-Katetov の挿入定理や Michael の挿入定理の関数族の終域「実数直線R」は, いかなる自明でない可分なバナッハ束に置き換えられる。」本定理の内容を詳しく紹介するべく, 日本語論文としてまとめた。 単調可算パラコンパクト性 (monotonically countable paracompactness) の実数値関数族を用いた特徴づけが, Good-Knight-Stares 等により知られている。この結果を, 順序線形位相空間 (ordered topological vector spaces) や位相ベクトル束 (topological vector lattice) を値にとる関数族を用いた特徴づけへと改良する定理を与えた。これまでの実数値関数族に対し, その終域の順序構造が整列順序から半順序へ変わってしまうために単純な類似が期待できないことや, バナッハ空間等の基本的な道具(集合値関数への連続選択理論等)を用いることができない空間を扱っているという困難点に対し, 打開する可能性を示唆するものであるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
関数の終域が実数から順序線形位相空間へ変化することには, 整列順序から半順序へ変わることによって生じる困難を克服する必要がある。特に, バナッハ空間の理論や集合値関数への連続選択理論を用いることができないという点を克服する手法の開発を目指したい。 また, 当初の研究計画のように, 拡張作用素の「ノルム保存」という数値的評価と「閉凸保存」という幾何学的評価の関係の解明を目指したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度, 購入予定の洋書の納入が間に合わない等の理由で繰越金が生じているが, 24年度以降に必要な洋書・和書等の文献の購入, 及び, 専門知識の提供を特に強化して使用する計画である。また, 論文投稿, 成果発表等にも用いる計画である。
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