研究課題/領域番号 |
23540101
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
長崎 生光 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50198305)
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研究分担者 |
川上 智博 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (20234023)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 変換群 / 同変トポロジー / 等変写像 / Borsuk-Ulamの定理 / Borsuk-Ulam群 / 順序極小 / 定義可能集合 |
研究概要 |
研究代表者の長崎は群作用の軌道構造を保つ同変写像すなわち等変写像についての存在定理に関わる研究を進めた.等変写像の非存在性は等変Borsuk-Ulam定理として定式化でき,この方向での先行研究でいくつかの結果が知られていたが,本研究ではこれらをさらに発展させるため,等変写像の存在・非存在問題の研究を行うことが一つの目的であった. そのために等変Borsuk-Ulam型定理が成り立つ有限群であるBorsuk-Ulam群について,Borsuk-Ulam群になるための十分条件を深く研究し,その結果,メビウス関数を利用した今までに知られていないBorsuk-Ulam群となるための十分条件を見いだした.その応用として単純群PSL(2,q)はBorsuk-Ulam群であることを示すことに成功した.また,球面上に線形かつ自由に作用する有限群もBorsuk-Ulam群であることを示した.さらに次元関数の等しい表現の間にいつ等変写像が存在するかという問題も考察し、いくつかの例を得た.これらの結果は当該分野において新たな理論展開の第一歩となりうるもので,意義ある成果と思われる. 分担者の川上は,第2の目的である近似定理の確立のために,トポロジーにおける基本的な結果を実閉体上のトポロジー(順序極小トポロジー)に拡張することを試みた.特に実閉体上の順序極小構造上でデファイナブルMorse理論を構築して,デファイナブルC2関数の中で,デファイナブルC2位相において,デファイナブルMorse関数は,開かつ稠密であることを証明した.さらに順序極小構造を拡張した局所順序極小構造について考察し,局所順序極小構造において,セル分解定理を証明した.これらの成果は今後の研究の基盤となる基礎理論であり,重要な意義があると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度における1つの目標は,等変写像の存在性・非存在性についてをBorsuk-Ulam型定理およびHopf型定理として定式化し,存在性・非存在性の新たな条件を見いだすことにあった.Borsuk-Ulam群は等変写像の非存在性と関わる等変Borsuk-Ulam定理の成り立つ群として定義されるが,どのような群がBorsuk-Ulam群であるかは完全にはわかっていない.23年度における研究によってBorsuk-Ulam群であるためのメビウス関数を用いた新たな十分条件を発見し,新たなBorsuk-Ulam群のクラスを発見することに成功した.これらの結果は当該分野において新たな理論展開の第一歩となりうるもので,意義ある成果と思われる. 第2の目的である等変写像の変形問題と近似定理の研究においても,分担者の川上を中心に,その基盤となる順序極小トポロジーの基礎理論の研究が進められた.特に23年度はデファイナブルMorse関数の開かつ稠密性の証明に成功し,近似定理の確立に向けての進展があった. このように初年度の研究は従来の研究からいくつかの進展が見られ,初年度における目的は十分達成できている.
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の長崎は,等変写像の存在問題・非存在問題を引き続き発展させるとともに分類問題への研究も推進する.特にBorsuk-Ulam群の新たなクラスを見つけ出し,従来の結果をさらに拡張することを目指す.また等変写像の等変ホモトピー類の分類問題をHopf型定理の観点から研究し,特に非有向自由G閉多様体から表現球面への等変写像の等変ホモトピー類の研究を通し,変形問題の研究への基盤を構築する. 分担者の川上は,引き続き近似定理の構築のための順序極小トポロジーの基礎理論の研究を行う.特にデファイナブル完備構造へのMorse理論の拡張,実閉体の順序極小拡張において,G不変全射沈めこみデファイナブルCr写像の部分的Cr-G自明性,デファイナブルCr-G多様体のデファイナブリーCr-Gコンパクト化可能性の研究を推進する. 両者の研究は,互いの研究を補う部分もあり,また,最終的にはこれらの研究成果を融合することも計画している.そのために和歌山大学や京都府立医科大学で定期的にセミナーを開催し,打合せや情報交換を行うとともに,各種の学会やシンポジウム等に参加し討論することで本研究の遂行に必要な情報を得る.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として,研究に必要な文献を整備し,研究成果を他分野に応用するために関連文献を購入する.特に位相幾何学,幾何学および代数,解析関係等の専門書を購入する.また論文作成,プレゼンテーション用のパソコン用ソフト,パソコンの周辺機器や内蔵機器等の消耗品を購入する. 旅費として,研究代表者および分担者は情報交換・討論のための研究打ち合わせおよびシンポジウム等で成果発表を計画しているが,その旅費として使用予定である.また成果を広く世界に公表するために研究代表者は外国での成果発表も計画しており,そのための旅費に使用する予定である.. その他として,複写サービスを利用や論文発表するために必要な論文の投稿料や論文別刷り代,またMathSciNet 等のデータベース使用料の分担金として使用予定である.
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