研究課題/領域番号 |
23540103
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
高山 晴子 城西大学, 理学部, 准教授 (90274430)
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キーワード | タイヒミュラー空間 / 錐状特異点 / 平坦構造 / 擬エルミート計量 |
研究概要 |
タイヒミュラー空間およびリーマン面のモジュライ空間の幾何構造について、点付きリーマン面のモジュライ空間をリーマン面上の錐状特異点付き平坦構造のモジュライ空間と同一視する立場からの研究を行っている。この錐状特異点付き平坦構造とは、リーマン面上のある有限個の点を除いてユークリッド構造をもち、かつそれらの有限個の各点では錐角と呼ばれる実数が対応して、全体としてGauss-Bonnet公式を満たしているものである。このような構造のモジュライ空間はTroyanovによって、いわゆる点付きリーマン面のモジュライ空間と同一視が与えられたのであるが、広く知られているような、リーマン面上の双曲構造のモジュライ空間との同一視から得られるリーマン面のモジュライ空間のWeil-Peterson計量のような計量は知られていない。本研究では、リーマン面の平坦構造リーマン面のモジュライおよびタイヒミュラー空間の計量を平坦構造のモジュライとの同一視を通して得ることを目標としている。 本年度は、昨年度に引き続き2次元球面の任意の錐角をもつ平坦構造のモジュライ空間上で得られる面積形式の符号を決定した。それらは完全に錐角のデータから記述され、Deligne-Mostowによって得られている一般化された超幾何関数のモノドロミーから得られる穴あき球面上のあるコホモロジー上のエルミート形式の符号と一致している。また、これはBavard-Ghysによる平面多角形のモジュライ空間の面積形式の符号の一般化となっていることを見いだした。 今後はこれらの関係および一致の理由を明確にすることによって研究を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイヒミュラー空間の幾何構造について、超楕円曲線上の錐状特異点付き平坦構造のモジュライ空間を2次元球面上のある特殊な錐状特異点付き平坦構造のモジュライ空間と同一視することにより、面積形式による擬エルミート計量を構成できたことに続き、2次元球面上の一般の錐角データをもつ錐状特異点付き平坦構造のモジュライ空間およびそのタイヒミュラー空間上の擬エルミート計量を得ることができた。これはDeligne-Mostowによって得られている一般化された超幾何関数のモノドロミーによる穴あき球面上のある種のコホモロジー上のエルミート形式が面積形式と密接に関係していることを示しており、その関係性を明確にすることには大変重要かつ今後の位相力学系の研究に役立つと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2次元球面上の錐状特異点付き平坦構造のモジュライ空間およびタイヒミュラー空間の面積形式について、Deligne-Mostowの一般化された超幾何関数のモノドロミーによる穴あき球面上のある種のコホモロジー上のエルミート形式との関係を明確にし、位相力学系の研究に応用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として当初パーソナルコンピュータの購入を計画していたが、コンピュータの性能に関して時期をずらした方がよりよいものが得られると判断したため購入を見送ったことによる。 パーソナルコンピュータおよびその周辺機器と使用ソフトを購入し、また引き続き連携研究者達との研究連絡および研究集会出席のための旅費、研究に必要な専門図書の購入に使用する。
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