研究課題/領域番号 |
23540104
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
中山 裕道 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30227970)
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キーワード | 力学系理論 / 極小集合 |
研究概要 |
本年度も引き続き,例外極小集合の新たなる構成に取り組んだ.具体的には,多重ワルシャワ円を極小集合に持つ曲面の微分同相写像の構成を試みた.もともと,この集合自身に極小な同相写像が存在することは,GottschalkとHedlundにより1955年に証明されている.力学系理論を考える上では,当然,外側の空間に拡張されるかを考えるべきであるが,これには時間がかかり,1982年のHandelの結果「多重ワルシャワ円を極小集合に持つ曲面の同相写像が存在する」を待つことになる.もともと力学系理論は微分方程式理論から始まっているので,次の問題としては,「多重ワルシャワ円を極小集合に持つ曲面の微分同相写像が存在するか」を考えられることになるが,GottschalkとHedlundの結果から50年たった現在でも完全な解決にはいたっていない. そこで,今年度は,circle inverse limit の観点から構成を試み,多重ワルシャワ円とおぼしき集合を極小集合に持つ曲面の微分同相写像を構成することに成功した.問題提起されてから50年以上も経っても未だにできていないという状況からして,通常の構成法ではうまくいかないことが想定される.そこで,inverse limitを使って構成することを考えた.特に,すべて円周からなる inverse limit を使うところが新しく,確かに新しいものの構成に成功した.但し,本当にこれが多重ワルシャワ円になっているかを証明することが難しく,先送りとなってしまった.従って,何か新しい集合を極小集合に持つ微分同相写像の構成には成功したという段階となっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
circle inverse limitを使って構成するという新しい視点が見つかり,結論に向かって大きな進展が得られた.実際,多重ワルシャワ円とおぼしき集合を極小集合とする微分同相写像も得られている.本当にこの集合が多重ワルシャワ円と同相であるかについては,今後の研究の結果を待つことになるが,あまり知られていないものであることは確かだと思う.
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今後の研究の推進方策 |
新しく見つかった極小集合の位相的特徴付けが今後の課題である.inverse limit自身は扱いやすいものなので分類できる可能性があると考えている.極小集合の構造が固まった場合は,更に,そのような極小集合を持つ力学系を分類するという次の段階が待っている.集合を決めて,それを極小集合に持つ力学系を分類するというやり方は,Sierpinski T^2集合のときに既に成功しており,進展を期待している.
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの成果の発表,及び,研究討論を目的として,2014年3月にフーリエ研究所(フランス)への海外出張を計画していた.しかし,研究連絡を予定していた研究者のご家族が病気となったため,出張を延期することになった.この分が繰り越しとなっている. 来年(2015年)3月にフーリエ研究所へ出張することを再び計画している.研究連絡のための海外出張できる期間の関係で,次の機会は来年の3月になる.私が渡航することについては,既に先方と相談済みで,延期となった研究連絡をここで行う予定である.
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