研究課題/領域番号 |
23540104
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
中山 裕道 青山学院大学, 理工学部, 教授 (30227970)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
キーワード | 力学系理論 / 極小集合 |
研究実績の概要 |
新しい例外極小集合の構成に成功した.具体的には,多重ワルシャワ円と同一の性質を持つ集合を極小集合に持つ円筒上の微分同相写像の構成に成功した. そもそも,ことの発端は1955年にGottschalk とHedlundが多重ワルシャワ円の上に極小な同相写像を構成したことに始まる.彼らの同相写像は多重ワルシャワ円の上だけで定義されており,埋め込まれる空間に拡張することができなかった.通常,力学系では多様体上に写像を構成する.この点で,曲面の微分同相写像で,極小集合が多重ワルシャワ円と同相になるものが作れるかという問題が提起された. これに関して,1982年Handelは多重ワルシャワ円を極小集合に持つ曲面の同相写像を構成した.すなわち,同相写像としては拡張に成功した.Handelの手法は,さきに多重ワルシャワ円を曲面の中に取っておいてから,同相写像を織り込んでいくという巧妙かつ複雑なものであった. そこで,本年度は,このHandel の手法では微分同相写像ができないことを,最初に証明した.その後,原点に戻り,曲面の微分同相写像で多重ワルシャワ円が極小集合になるものが存在するかという問題を考え,結果として,上にも書いたように,円筒上の無限回微分可能な微分同相写像で,極小集合は連結だが弧状連結でない例を構成した.多重ワルシャワ円は連結だが弧状連結でない集合として非常に有名なものである.この点で初期の目的を達成したことになる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から目標としてきた「多重ワルシャワ円を極小集合に持つ曲面の微分同相写像を作る」という問題提起からすると,多重ワルシャワ円が連結かつ弧状連結でないコンパクト集合の代表格であるという意味で達成している. しかし,ではできたものは多重ワルシャワ円と同相なのかと聞かれるとわからないというのが現状である.構成することに重点をおいたため,これらの集合が同相なのかどうかを判定できない.この点が課題として残っている.
|
今後の研究の推進方策 |
達成度のところでも書いたように,多重ワルシャワ円そのものを極小集合とするような曲面の微分同相写像を構成できるかという問題は依然未解決である.構成に用いた円周の逆極限の対称性を崩し,連分数展開を用いて微分同相写像を作ればよいという方針は立てられるが,調整が難しく,実際の作業は相当大変なものになると予想される. 一方,新しい展開も生み出された.極小集合として用いた集合は円周の逆極限として構成された.円周の逆極限はいろいろな力学系を許容する.この点で,この集合上の同相写像群に対して幾何群論を打ち立てるという新しい展開が見込まれる.カントール集合の同相写像群が単純であるという定理を,基礎として,多重ワルシャワ円の同相写像群がおもしろい群になることを示せないかと考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の終盤に向けて,コンピュータ環境を整備し,コンピュータシミュレーションと研究結果のまとめを行うことを計画していた.ところが,理論面の進展が遅れ,コンピュータシミュレーションの規模が定まらなくなってしまった.そこでコンピュータの購入を次年度に見送ることにしたため,次年度使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
コンピュータを購入するために使用する計画である.
|