当初「2次元力学系の連結例外極小集合の分類」を始めたきっかけは,複雑だ複雑だと言われる2次元力学系は本当に複雑なのだろうかという問題提起であった. そこで,複雑さを表す指標として,複雑な極小集合を持つ2次元力学系の構成を考えた.実際,曲面の微分同相写像の力学系の場合,知られている極小集合は周期点,全体集合,カントール集合などといった比較的簡単なものしかなかった.そこで,弧状連結ではないが連結な極小集合をもつ曲面の微分同相写像の構成を試み,2015年度にこれに成功した.今年度は,最終年度として,この構成した極小集合の位相の決定を試みた. 同相写像であれば,無限ワルシャワ円を極小集合に持つ曲面の同相写像がGottshalk-Hedlundにより作られている.そこで,無限回微分可能な微分同相写像について,無限ワルシャワ円を極小集合に持つ例を作ろうとするのは自然な考え方である.しかし,世界中で試みられたがなかなかうまくいかなった.唯一成功したのはWalkerで,1991年に1回微分可能な例を構成した.そこで,2015年度に私が構成した無限回微分可能な微分同相写像について,その極小集合が無限ワルシャワ円と同相だろうかという問題提起にいたった.2015年度の例は,円周の逆極限を使い巧みに構成したため,構造が非常に難しく,構成そのままからでは無限ワルシャワ円と同相かが判定できない.そこで,外部の構造から内部の構造を考えるというアイデアを思いつき,この極限集合が無限ワルシャワサークルと似た構造を持つことまではわかった.同相を示すまでにはいたらなかったが,弧状連結でなく連結な極小集合の特徴づけに迫ることはできた. 結果として本研究でわかったことは,本質的に新しい2次元力学系の連結例外極小集合を構成した点である.
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