同相写像の軌道の様子を位相幾何学的に研究するのが離散力学系である.これまで,円周の力学系において大きな発見が得られてきた.本研究では,この次元をあげ,曲面の同相写像について研究を行った.その結果,曲面上の無限回微分可能な微分同相写像で,局所連結ではないが連結な極小集合を持つ例を初めて構成した.また,これに伴い,曲面上の微分同相写像の力学系的な特徴づけにも成功した.不変なコンパクト集合のうち,包括関係に関して極小なものを極小集合という.極小集合はどの力学系にも存在し,軌道が巻きついていく部分にあたる.この点で,新しい極小集合の発見は数学的に大きな貢献をなしたと考える.
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