研究課題/領域番号 |
23540105
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
小沢 誠 駒澤大学, 総合教育研究部, 准教授 (50308160)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 結び目 / 位置 / 曲面 / ハンドル体 |
研究概要 |
結び目の位置の中で、1954年にSchubertによって導入された橋位置は最も基本的なものの一つである。Otalは1982年、自明な結び目の任意の非最小橋位置は安定化されていることを示した。この性質は、2橋結び目(Otal, 1985)及びトーラス結び目(Ozawa, 2011)に対しても成り立つことが示されている。研究代表者は論文(Non-minimal bridge positions of torus knots are stabilized, Math. Proc. Cambridge Philos. Soc. 151 (2011) 307-317)において、「結び目の任意の非最小橋位置は安定化されているか?」という問題を提起した。もし橋表示がwell-mixed conditionを満たせば、Hempel距離は2以上であることが論文(K. Takao, Bridge decompositions with distances at least two, arXiv:1106.0963)で示されている。また、Hempel距離が2以上ならば、橋位置は安定化されていないことが分かる。従って、ある非最小橋表示に対してwell-mixed conditionを満たすことが分かれば、その橋位置は安定化されていないことが分かり、上の問題の反例を与えることができる。研究代表者は、大阪大学大学院理学研究科の高尾和人氏との共同研究において、上記研究計画を実行し、予想された成果を挙げた。この結果は、論文(A locally minimal, but not globally minimal bridge position of a knot, arXiv:1203.1119)にまとめ、専門誌Math. Proc. Cambridge Philos. Soc.に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の「1.研究の学術的背景」で記述したように、結び目の位置は大きく正則表示とMorse位置の二つに分類される。「研究実績の概要」で記述した研究成果は、Morse位置に関するものである。この点で、正則表示に関する研究目的は十分に達成できていないと言える。しかしながら、研究の手法として橋表示のwell-mixed conditionを用いており、橋表示は正則表示でもあるので、この点では正則表示の研究であるとも言える。総括すると、狭義の研究計画通りに進んでいないが、広義の研究計画通りには順調に進んでいるとしたい。平成23年度に挙げた大きな成果として、Math. Proc. Cambridge Philos. Soc.に投稿中の論文(A locally minimal, but not globally minimal bridge position of a knot, arXiv:1203.1119)がある。この論文の主定理では、3橋結び目の4橋位置で安定化されていないものを新たに与えた。この結果は、3橋結び目に対して強既約な4橋球面が入ることを意味している。研究課題「結び目の位置と曲面」について、結び目の橋位置と橋球面に関する重要な結果を挙げることができたと自負している。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」で記述したように、結び目の橋位置については十分に満足のいく成果を挙げられたと自負している。高尾和人氏との共同研究における手法は、橋表示と橋位置との相互関係に着目した潜在的な可能性を持つものであり、今後の研究の発展が大いに期待される。従って、今後の研究は橋位置に関するものを中心に考えていきたい。既に、論文(A locally minimal, but not globally minimal bridge position of a knot, arXiv:1203.1119)で挙げた問題「整数n>3に対して、局所的に最小であるが大域的に最小でないn橋位置を無限に生成できるか?」に対して、研究の方針は立っている。橋表示のwell-mixed conditionを調べることで、ある整数n>m>2に対して、m橋結び目の局所的に最小のn橋位置を構成できると期待している。また、今後は結び目だけでなくその拡張であるハンドル体結び目についても研究を進めていきたい。既に、石井敦氏(筑波大学大学院数理物質科学研究科)と岸本健吾氏(大阪工業大学工学部)との共同研究が進行しており、ハンドル体結び目の2分解の存在性と一意性についての結果を得た。現在、論文(Knotted handle decomposing spheres for handlebody-knots)としてまとめている途中である。また、平成23年8月15日から24日の期間、メキシコ国立自治大学のMario Eudave-Munoz教授と研究打ち合わせをし、トンネル数1かつ種数2のハンドル体結び目で、2分解を持つものの特徴付けをした。この成果についても現在論文(Composite tunnel number one genus two handlebody-knots)としてまとめている途中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
国外の学会・研究出張について下記2点を計画している。7月2日から7日までポーランドで開催されるヨーロッパ数学会(6th European Congress of Mathematics, http://www.6ecm.pl/)に参加・講演予定である。その為の旅費として、30万円程度支出させて頂く。特別会議「mini-symposium: Knot Theory and its Ramification」で、研究成果「A locally minimal, but not globally minimal bridge position of a knot」を発表する予定である。また、8月下旬から9月上旬にかけて、ピサ大学のCarlo Petronio教授及び、ピサ大学に在外研究予定の古宇田悠哉氏(東北大学大学院理学研究科)を訪れ、ハンドル体結び目について研究打ち合わせをしたい。この為の旅費として、30万円程の支出を予定している。その他、国内学会出張旅費やMacBook Pro(30万円程度)またはMathematica(20万円程度)を物品費として支出予定である。
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