研究課題/領域番号 |
23540110
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
江田 勝哉 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90015826)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | Hawaiian Earring / Peano continua / one dimensional / two dimensional / fundamental group / n-slender / solenoid / cover |
研究概要 |
研究目的にある項目によって進んだものとそうでないものがあるが、進んだものについて述べる。1. 非可換スペッカー現象に関しては、共同研究者中村順(大学院生)[1]が、有限表現的 torsionfree 群で、n-slender とならないものの存在を示した。またn-slenderness が多くの HNN-extension で保たれること、torsionfree Baumslag 群が n-slenderであることを示した。 [1] J. Nakamura, Atomic property of the Hawaiian earring group for HNN-extensions, submitted. 2. 2次元 Peano 空間については、以前からの共同研究を Strobl の集会で、A. Zastrow, U. Karimov と続けた結果、4つの exotic な construction がどの2つも homotopy equivalent でない空間をつくり出すことを示した。[2] K. Eda, U. Karimov, Dusan Repovs and A. Zastrow, On Snake cones, alternating cones and related constructions, submitted. 3,4. 多様体に Hawaiian earring をつける構成の空間の基本群から元の多様体をうることは、多様体の基本群が torsionfree の場合成功した。その他に、Solenoid の連結カーバーについて、V. Matijevic との共同研究で、位相群としてのカーバーであることとの同値性について有限カバーでは同値、無限カーバーについては非同値で、かつすべての Solenoid が連結無限カーバーをもつことを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)の非可換スペッカー現象については、可算の torsionfree 群とくに有限表示群でさえ n-slender 群でないものがあるため、n-slender 群であるかないかが、可換群の場合とまったく異なるという側面がわかった。このことは、大きな進歩であり、今後、有限表示でtorsionfree 群の n-slenderness の特徴付けという問題を提起した。(2) 2次元の Peano continua の研究は、実施状況の書いた結果は、当初の大きな予想の正しさを支えている。この結果の他、Hawaiian tori-wedge に関する結果を得たがこれは、よく知られている 2-dimensional Hawaiian earring と全く異なる結果で当初の目標とは異なる方向ではあるが、大きな展開をしたといえる。(3),(4) については、ある程度の進歩であり、(5) についてては論文を投稿した以外の変化はない。(6) の連結全順序空間については、上條良介(共同研究者、大学院生)により進展があり、その結果が石宇哲也の Aronzajn line に関する結果を生んでいる。 (7) の Asymptotic cone については研究に手をつけていない。実績に書かなかったものとして、有限生成自由群の逆極限の分類の結果も得ており、課題の周辺に研究が広がっている。
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今後の研究の推進方策 |
非可換スペッカー現象に関しては、n-slenderness の他、それよりも少し弱い Peano continua を使って定義される性質が H. Fischer により導入されている。この性質は、可換群の場合でも興味深いものである。今まで、研究目的(1)については純粋に群論的な研究であったが、今後、空間的な定義も導入し Fischer と共同研究する。研究目的(2)については、Hawaiian tori-wedge の 3次元特異ホモロジー群を研究する。2次元 Hawaiian earring の 3次元特異ホモロジー群は非自明群となることが知られている。一方 Hawaiian tori-wedge の 2次元特異ホモロジー群は可算の自由アーベル群であることが昨年わかり、2次元 Hawaiian earring の 2次元特異ホモロジー群が整数群の可算直積群であることと対照的である。このようなことからHawaiian tori-wedge の 3次元特異ホモロジー群は自明となる可能性が高い。これは A. Zastrow(Gzansk) との共同研究予定である。研究目的(3)に関しては、多様体に Hawaiian earring のコピーを稠密につけてできる空間の基本群から多様体ができるという結果を得ているがこのプレプリントを今年度中に完成させる。研究目的(5)の Grope 群に関しては、投稿中の結果の延長上に Grope 群の分類という問題もあり、これについては M. Cenceli, A. Vaptetic との共同研究である。研究目的(6)は連結全順序集合が関係するため、集合論が不可欠で、集合論研究者との交流をすすめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年8月上旬に来日中の H. Fischer を神戸から招き、1 週間の予定で共同研究をする。2012年11月に神戸大学、12月に名古屋大学に各々4日の予定で研究代表者と共同研究者(上條)が訪問し「集合論とTopology」の共同研究を行う。神戸大学では、酒井拓史、ヨークブレンドル、渕野昌と、名古屋大学では松原洋、吉信康夫、薄葉季路と共同研究を行う。2013年1月上旬に「Geometric Topology」の集会を早稲田大学で行い,国内の Geometric Topology 研究者を招く。2013年2月下旬から3月上旬にかけて15日間リュブリャナ大学(スロベニア)の滞在し、同大学の D. Repovs, M. Cenceli, A. Vaptetic, Z. Virk と共同研究をする。A. Zastrow (Gdansk) も同期間滞在する予定で、この期間に共同研究をする。
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