研究課題/領域番号 |
23540111
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
福井 和彦 京都産業大学, 理学部, 教授 (30065883)
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キーワード | 微分同相群 / 幾何構造 / 一様完全 / 交換子長 / 擬準同型 |
研究概要 |
幾何構造を保つ微分同相群の一様完全性、特に微分同相写像の交換子長に焦点を当てて、研究を行った。成果としては、部分多様体を保つ微分同相群の一様完全性および非一様完全性について考察し、その成果としての論文が受理された。さらに、それらが成り立つ例を考察し、2次元多様体に対して、その特徴づけを得た。また、葉層に対して、葉を保つ微分同相群の一様完全性および非一様完全性についても考察し、論文として発表した。以下の研究集会や研究連絡での情報収集や議論は本研究の成果を得るために有益であった。 1.2012年6~7月、ポーランドのLodz大学で開催された「Foliations 2012」国際研究集会に出席幾何構造を保つ微分同相群に関する研究情報の交流を行った。2.2012年8月、「鳥羽微分トポロジー2012研究会」を主催し、微分同相群と関連分野についての12の講演を持ち、実りある研究連絡および情報交換を行った。主な講演者は森淳秀(大阪市大)、阿部孝順(信州大)、笠川良司(日本大)、足助太郎(東京大)、門田直之(京大)、矢ヶ崎達彦(京都工繊大)、松田能文(東京大)、濱野佐知子(福島大)、松木敏彦(龍谷大)であり、阿部は福井との共同研究の講演を行った。また、「全日本トポロジーシンポジウム」(佐賀大)に出席、情報収集及び研究連絡を行った。3.2011年10~11月、「葉層構造と微分同相群2012」研究集会(東大玉原国際セミナーハウス)に出席、葉層構造の幾何的、位相的、力学的研究に関する研究情報の交流を行った。4.2011年12月、「複素解析的ベクトル場・葉層構造とその周辺」(龍大セミナーハウスともいき荘)に出席、情報収集および研究交流を行った。5.2012年1月、「接触構造、特異点、微分方程式およびその周辺」(秋田カレッジプラザ)に出席、情報収集および研究交流を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特に、2次元多様体と1次元多様体の対に対しては、一様完全性の完全な特徴づけを得た。また、葉を保つ微分同相群に対する一様完全性については、円周を葉にもつ1次元葉層に対して擬準同型を構成することによって、一様完全性の特徴づけに成功し、論文として発表した。一般次元葉層について、全ての葉が稠密である場合、葉を保つ微分同相群の一様完全性については、現在研究中である。実モース型特異点をもつ葉層を保つ微分同相群の1次元ホモロジー群については多様体対を保つ微分同相群の一様完全性について考察し、その特徴づけにある程度成功した。知見を得、論文として発表したが、複素モース型特異点をもつ実余次元2葉層を保つ微分同相群の1次元ホモロジー群については、今後の課題である。これらの研究に、葉層構造論や変換群論、力学系、特異点の研究者たちとの情報活動や研究連絡が必要である。また、種々の幾何構造を保つ微分同相群の構造について、位相構造や代数構造の観点から研究およびその周辺研究の情報収集が必要であり、これをテーマにした小研究会を開催し、研究成果の発表、研究情報の交換および今後の課題等を議論した。これらに対して、国内のトポロジーや葉層構造関連の研究集会への出席、研究連絡、発表のため、旅費を、専門的知識の提供や研究補助のため、謝金を使った。また、図書資料、文具類などのため、消耗費を使った。
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今後の研究の推進方策 |
1.多様体対を保つ微分同相群が完全であり、さらにこの群が一様完全である条件についての知見を得ている。更には、曲面と円周の対の場合は一様完全である完全な、特徴づけを得ている。したがって、当面の目標は、この条件に対する多様体対の多くの例の考察を行い、特徴づけのさらなる整備を行う。また、この条件は部分多様体の次元が1次元に関するものであり、一般次元化に挑戦したい。 2. 前年度の研究継続中の課題について、研究を続行する予定である。すなわち、単連結なコンパクト葉の積葉層に対する葉を保つ微分同相群の一様完全性の研究、および複素モース型特異点をもつ実余次元2葉層を保つ微分同相群の1次元ホモロジー群の決定に関する研究である。
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次年度の研究費の使用計画 |
これら計画遂行のため、25年度は、情報収集や研究連絡のため(年8回程度を予定)および研究会開催のため、旅費として、88万円、専門的知識の提供として、謝金20万円を使う。研究関連分野の図書資料や文具類等のため、設備備品費や消耗品費として、10万円を使う。また、コンピュータ関連およびコピー機を設備品費、消耗品費として購入、その費用として、10万円を使う。その他、会議費として、2万円を使う。
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