研究概要 |
Boris Doubrovと待田芳徳との共同研究により次の成果を得た。階数付きリー環gの階数付きベクトル空間Vへの表現(g,V) に対して,一方では積分可能な線形偏微分方程式系の族ID(g,V) が、他方ではVに付随して決まる旗多様体Flag(V) の部分多様体の族SM(g,V) が定まり、両者の間に圏同型対応がある。さらに、(g,V) が単純既約の時、ID(g,V) (またはSM(g,M)) の元の不変量を決定するアルゴリズムが、拡大された動標構の方法と代数的調和積分論を用いて、構成され、不変量の在処は(g,V) から定まるコホモロジー群 H1+であることが判明する。さらにまた、コホモロジー群 H1+は多くの場合消滅するが、これが非自明となるような(g,V) が分類決定される。 これらの成果は、2011年9月オーストラリア国立大学キャンベラでの国際研究集会The Geometry of Differential Equations での研究代表者による招待講演において、巾零解析に関する一連の研究成果とともに、発表紹介された。 現在、上述の成果をDoubrovと待田との共著論文として纏める作業を進めており、Linear differential equations on filtered manifolds and extrinsic geometry in flag varieties としてほぼ書き上げたが、細部の詳述や推敲、いくつかの具体例への応用などまだ作業が残っている。 これらの成果は、リー環の表現と有限型の線形偏微分方程式系と旗多様体における外在的幾何の関係を一般的な視点から明らかにするものであり基本的で重要な仕事であると思われる。また、この理論は様々な具体例を見出し構成する方法を与えており、それら具体例における詳細な研究から次の発展が期待される。
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