研究概要 |
これまでの研究によって次の理論を得ている:階数付きリー代数g の階数付きベクトル空間Vへの表現(g,V)に対して,一方では積分可能な線形偏微分方程式系の族ID(g,V) が,他方では,Vに付随して決まる旗多様体Flag(V) の部分多様体の族SM(g,V)が定まり,両者の間には圏同型対応がある.さらに,(g,V) が単純既約の時には,ID(g,V) (またはSM(g,V))の元の不変量を決定するアルゴリズムが構成され,不変量の在処は(g,V)から一定の方法で定義されるコホモロジー群H1+である. 今年度はこの理論を具体的な場合に適応し詳しく調べた.特に,興味深い例として(g,V)が(1) sl(3) とその随伴表現, (2) sp(4) とその随伴表現 (so(2,3) とその随伴表現),の場合に鍵となるコホモロジー群H1+を表現論の方法(ウェイト図形,Kostantの理論など)を用いて決定した.そしてその幾何学的意味を探った. 岩波書店からの出版が計画されている本「倉西正武の数学」への寄稿原稿として「微分方程式の流れと幾何の光」を9月に書き上げた.この執筆の過程で微分方程式の歴史を幾何学の目から振り返り整理した.そして特に,微分方程式系に対する倉西の延長定理を巾零解析の枠組みにおいてフィルター付き多様体上の微分方程式系の延長定理へと拡張した. フイルター付き多様体上の微分方程式系についての我々の一連の研究,特に最近のKlein Cartan programme について,東京,大阪,ポツダムでの国際的なセミナーや研究集会で講演,議論し,理論の広がりを図った.
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