| 研究実績の概要 |
これまで巾零幾何・巾零解析を提唱し展開してきたが，本研究期間全体を通じて，この視点から微分方程式の幾何学的・群論的研究を進め，その研究方向をKlein-Cartan programと定式化し，その骨格をBoris Doubrov，待田芳徳との共同研究を通して確証してきた．即ち，有階リー代数gと有階g加群Vの組(g,V) に対して典型となる微分方程式系が定まり，その変型全体のなす族D(g,V)が定義される．微分方程式系のD(g,V)への分解と合成，そして各D(g,V) の詳細な研究を通して微分方程式系を系統的に解明しようというのがKlein-Cartan program である. 積分可能な線形変型全体IntLinD(g,V) は(g,V)型の部分多様体の外在的幾何と圏同型であり，このprogramは，外在的幾何の研究にも系統的な視点と方法を与えるものである．
特に，gが単純リー代数でVがその既約表現の時，IntLinD(g,V)に属する微分方程式系の不変量を求める方法を与え，不変量はコホモロジー群H(g_,g') に値をとることを示し，さらにそのコホモロジー群はルート系を用いて計算できることを示した．その応用として部分多様体に関する様々な剛性定理が 統一的に得られる．
単純既約な組(g,V) だけでも多様な世界を成している．今年度は，それらの中で次元が小さく非自明なものについて，特に，微分方程式系の線形と非線形の関係，幾何構造の外在的幾何と内在的幾何の関係に焦点を当て，詳しく研究した．そこにガウスの大定理を一般化する深い関係が秘められていることを示唆するいくつかの結果を得たが，十分な解明にはまだ至っていない．
Klein-Cartan Program は一般論と各論の双方向に豊かな広がりを持っている．20年6月にはBanach CenterWorkshhopで12月にはInstitut Henri Poincare Workshop で，これまでの一連の成果のサーベイ講演をし，今後の研究課題として4つの主要問題を提出した．
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