研究課題/領域番号 |
23540117
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研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
佐古 彰史 釧路工業高等専門学校, 一般教育科, 准教授 (00424200)
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研究分担者 |
前田 吉昭 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40101076)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / ドイツ / ベルギー / イギリス |
研究概要 |
本応募研究の延長線上にある長期的な目標には、非可換変形された多様体(非可換多様体)のゲージ理論を用いた微分位相幾何学の確立がある。そのために非可換多様体上のインスタントンの構成とその微分位相幾何学的性質の解明を、変形量子化あるいは幾何学的量子化の方法を用いて実行することが目的である。最初に現在研究途上にあるR4上のインスタントンの非可換変形とそれに付随する位相不変量の非可換変形の性質を解明し、その後CP2などの他の非可換多様体上についてそれらの解明を目指すことが目標である。平成23年度の研究実績: 研究分担者である慶應大の前田吉昭教授との共同研究で、R4上のU(N)(N≧2)ゲージ理論において非可換変形されたインスタントンを構成し、その解で定義される位相不変量(インスタントン数)が変形されない事、その非可換インスタントンをともなったディラック作用素の指数も変形を受けないこと、ADHMデータとの1対1対応が存在することまで明らかにし、この論文が掲載された。本研究ではインスタントンについての理解がメインテーマであるが、その理解の助けになる2次元のゲージ理論のソリトン解の変形量子化についても研究を行った。具体的には、S2上とポアンカレ円盤上のボーテックス解の変形量子化をフェドソフ流に行い、非可換S2と非可換ポアンカレ円盤上のボーテックス解を構成した。また、その変形量子化ではボーテックス数が変化する可能性があることも示した。この内容は国際会議で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インスタントンの変形量子化に関する理解を深めることを主な目的とした本研究であるが、変形量子化する前の可換な場合についてよくわかっていないことは、本研究では対象としない。よくわかっているインスタントンについては多くは4次元ユークリッド空間R4上のインスタントンである。R4のインスタントンの変形量子化に関係する部分については概ね重要な性質に関して調べつくし、論文として出版されたので一応の決着がついている。ゲージ群がU(1)の場合についての考察が不十分であることは認めるが、それ以上に緊急性が高いものを優先している。優先度が高い次の段階に進む方向としてコンパクトな多様体上のインスタントンの量子変形が考えられるがそれをいきなりインスタントンで考察するのは飛躍がる。そこで一度インスタントンから離れて2次元のゲージ理論を用いて研究をしているのが現在の状況である。少し方向性に修正があるという意味では当初の目的から遠回りになっているが、2次元のゲージ理論に関しての研究が進んでいるという点と、この経験が4次元のゲージ理論に戻ってきた際には必ず役に立つであろうという点を考慮すると、概ね順調にすすんでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの研究はユークリッド空間での変形量子化の研究がほとんどであった。今後はコンパクトな空間をメインのターゲットに様々な多様体の変形量子化とその上でのゲージ理論について研究をすすめようと考えている。具体的に変形量子化の解を構成するためには非可換変形を具体的に書き下すことのできる多様体を構成する必要がある。そのためKarabegovの方法などを用いてCPNやCHNなどの局所対称空間における変形量子化のスター積を具体的に構成することを24年度は重点的に行う予定である。具体的にスター積を構成することができた場合は各種ゲージ理論をそれをもとに構成できるはずなので、その手順で進めていく予定である。この方向でソリトン解が構成し、そのソリトン解を特徴づける位相不変量の性質を調べていくことでゲージ理論の非可換変形の理論を定性的に調べていくことが可能になるとともに、その応用としての非可換多様体上での変形量子化の立場からの微分幾何を構成することに発展していくであろう。また、ソリトン解を特徴づける位相不変量を構成しその変形の様子を観察することで、特性類などの位相不変量の変形量子化の理論を構築していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在、慶應義塾大の前田教授と共同研究を行っているが、2次元のボーテックス解の変形量子化の構成、あるいはインスタントン解の変形量子化の構成に関して引き続き共同研究を行っていく予定である。そのために、慶應大学への出張や前田教授の釧路高専への招へいに旅費を使う予定である。これに関しては双方向に年にそれぞれ2,3回程度を予定している。また、ベルギーのリエージュ大学のレコムテ教授やイギリスのエジンバラ大学のスザボー教授等と研究に関して意見交換を行う機会が昨年度あったが、今後も引き続き彼らを含めた海外の研究者から情報を提供していただいたり議論していただく、あるいは研究で得られた成果の発表などで国際会議に参加するなどを計画しており、その海外出張にも旅費を使う予定である。これは講義が行われていない8月にいくのが教育との兼ね合いでは望ましいのであるが、欧米のバケーションと重なるため先方との打ち合わせで時期を決めていくしかないであろう。出張期間としては2週間程度を考えているが、これも先方とのすり合わせが必要であるので、適宜柔軟に対応していく予定である。また、書籍や論文の購入などを主たる用途に物品費を使用する予定である。
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