研究課題/領域番号 |
23540117
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐古 彰史 東京理科大学, 理学部, 准教授 (00424200)
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研究分担者 |
前田 吉昭 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40101076)
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キーワード | 国際研究者交流 / イタリア / ポーランド / ベルギー |
研究概要 |
本応募研究の先にある目標には、非可換変形された多様体(非可換多様体)のゲージ理論を用いた微分位相幾何学の確立がある。そのために非可換多様体上のインスタントンの構成とその微分位相幾何学的性質の解明を、変形量子化あるいは幾何学的量子化の方法を用いて実行することが目的である。より細かく段階的に目標を設定すると、最初に現在研究途上にあるR4上のインスタントンの非可換変形とそれに付随する位相不変量の非可換変形の性質を解明し、その後CP2などの他の非可換多様体上についてそれらの解明を目指すことが目標である。現在までの研究でユークリッド空間におけるインスタントンの変形量子化の様子はある程度解明された。次のステップとして、CP2などの曲がった多様体の上でのゲージ理論の変形量子化に研究を進める段階に現在ある。前年度までに、新しく計算可能な変形量子化された多様体を構成すべく複素射影空間と複素双曲空間の変形量子化をカラベゴフによる変数分離の方法を用いて構成した。結果はガウスの超幾何関数を用いて交換関係を書き下すことができる。これに関しては研究協力者である梅津裕志准教授(釧路高専)と鈴木俊哉准教授(釧路高専)との共同研究である。平成25年度はこれをさらに推し進め、等質ケーラー多様体上でベクトル場の運動項を持つゲージ理論を構成することに成功した。具体的に計算可能なモデルとして、上述のカラベゴフの方法で変形量子化した複素射影空間と複素双曲空間の上のゲージ理論も、あらわな表現を用いて構成することに成功した。またベクトル場が線形微分作用素である条件が今の変形量子化の場合はキリングベクトル場しかないことも示している。この内容は現在専門誌に投稿され審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インスタントンの変形量子化に関する理解を深めることを主な目的とした本研究である。変形量子化前の空間でよくわかっているインスタントンは多くは4次元ユークリッド空間R4上のインスタントンである。R4のインスタントンの変形量子化に関係する部分については概ね重要な性質に関して調べつくし、論文として出版されたので一応の決着がついている。ゲージ群がU(1)の場合についての考察が不十分であることは認めるが、それ以上に緊急性が高いものを優先している。優先度が高い次の段階に進む方向としてコンパクトな多様体上のインスタントンの量子変形が考えられるがそれをいきなりインスタントンで考察するのは飛躍がある。特に現在の目標にして進めているのは、複素射影空間上のインスタントンの変形量子化であるが、変形前のインスタントンについても研究が不十分な点が多い。したがって、変形量子化する前の段階も含めて複素射影空間でのゲージ理論やインスタントン解の研究を進め、さらにその変形量子化を構成しようという段階である。現在までに、計算可能な変形量子化を構成することに成功し、今年度はその上でのゲージ理論 の定式化まで成功した。次のステップとしては、インスタントン解について理解を深めていくことになる。研究開始当初に想定していた以上に多くの問題があることが、次第に明らかになってきており、目標完全なる達成にはなお多くの時間が必要であり、さらに思わぬ展開を見せたりもしているが、少しずつ着実に新しい理論を構築できており、その意味でおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
4次元ユークリッド空間におけるインスタントンの変形量子化の理論に関しては理解がある程度進み、次の段階としてコンパクトな多様体におけるインスタントンの変形量子化を考える段階に入っている。ただ、インスタントンについて研究を進める前の段階で、そも そも具体的な字変形量子化の計算ができる多様体の構成でなおかつ、変形前のインスタントンについての理解がある程度得られているものが必要であった。その模型として、まず複素射影空間のカラベゴフの方法による変形量子化を構成することは成功した。また、この変形量子化された複素射影空間の上にゲージ理論を定式化することにも成功した。 今後はこの変形されたゲージ理論におけるインスタントンやボーテックスなどのソリトン解について具体的な解を構成し、あるいは解の性質について解明していくなどの研究をすすめる予定である。前田吉昭教授、梅津裕志准教授、鈴木俊哉准教授などとの共同研究を通して、変形量子化された複素射影空間上のゲージ理論のインスタントンの理解の研究や、特にアティヤ‐ヒッチン‐シンガー流のツイスター理論からのインスタントンの構成法をさらに進化させる研究などを行っていく。釧路高専の梅津裕志准教授と鈴木俊哉准教授と共同研究のためには長期休業中などを利用して自分が釧路に出張する必要がある。また、得られた研究内容を発信していくため、あるいは国外の研究者と研究討論を行うためには、国際会議に出席して講演する回数をできる限り多く設ける必要があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は本研究資金を用いた海外出張が無かったのに対し、26年度に国際会議に参加するための海外出張が2件(XXXIII WORKSHOP ON GEOMETRIC METHODS IN PHYSICS 29 JUNE - 5 JULY 2014, POLAND と Seventh International Workshop DICE2014 Castello Pasquini/Castiglioncello (Tuscany), September 15-19, 2014)予定されており、そのための旅費を考えた場合に来年度分の研究費のみでは不足するため。 国際会議Seventh International Workshop DICE2014 Castello Pasquini/Castiglioncello (Tuscany), September 15-19 に参加のための旅費として30万円程度の直接経費が使われ、共同研究者と研究討論するための釧路へ長期出張する旅費に15万円程度、資料整理等の謝金に5万円、その他会議費等に5万円、消耗品に10万円程度、合計すると65万円程度の支出を予定している。26年度の交付予定額は60万円なので、来年度の交付金だけでは5万円ほど不足する見込みである。主に消耗品の購入にこの繰越金46,340円を充当する計画である。
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