研究課題/領域番号 |
23540121
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松浦 勉 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80181692)
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研究分担者 |
齋藤 三郎 群馬大学, 名誉教授 (10110397)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 逆問題 / 再生核 / 信号解析 |
研究概要 |
混合信号の分離再生問題を逆問題の一つとして扱った.この問題には,従来多変量解析の手法(主成分分析,因子分析等)を用いる流儀があるが,それぞれの元信号のパワーがある程度そろっていないと有効ではない.この問題点を克服するために,近年,信号源の統計的独立性を利用する「独立成分分析」も開発されてきたが,この手法は事前に元の信号源の種類数がわかっていることが前提となっている.そこで,複素ウェーブレット関数を用いて元信号の種類数も同時に求めることが出来る方法を開発した.この方法は混合信号の複素ウェーブレット変換(主にガボール変換を用いた)の商を,各時間,各周波数毎に(離散点上で)求め,その値が実数に近いものになった場合は,その時間・周波数において(混合信号においても)元の信号が卓越しているはずであり,同じ元信号が卓越している時間・周波数においては,上記の商が同一の実数を取る,という数理的性質を利用している.また,この方法で得られた実数値(これは,元信号の種類数に対応する異なる実数が得られるはずである)から,元信号から混合信号を生成した混合行列も推定することができる.よって推定された混合行列を用いて,元信号を再生することが可能となる. 以上の方法をアルゴリズム化して2次元の混合信号(混合画像)分離・再生の数値実験を行ったところ,非常に良好な結果が得られた.同じ問題を独立成分分析でも行ったところ,同じ程度の分離結果が得られることもあるが,ここで開発した方法は,あらかじめ元信号の種類数がわかっていない場合(実際の問題では,この状況が普通である.)にも適用できることが大きな利点である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた我々の方法論の工学的展開という意味では,混合信号の分離再生という工学的問題に適用できて,その有効性も確認されたので,順調に進展していると考えている.また,いままで方法の有効性の確認という観点から積み残してきた,ポアソン方程式の近似解の校正アルゴリズムの有効性の確認,波動方程式の逆問題の解構成アルゴリズムの有効性の確認も行い,それぞれ論文として執筆したので,その意味でも当初目標は順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
群馬大学医学部と脳磁場解析の共同研究を行った経験をもとにしながら,我々(松浦と齋藤)が開発してきた逆問題解法がこの問題に応用可能かどうかを検討する.この問題は普通の工学的問題とは様相がかなり異なるため,現時点では我々の方法論の延長上だけでは解決できない困難があることが予想される.この場合は医学部の先生方との共同研究も想定している.(しかしこの件は全く不確定なので今回の研究分担者には含めていない.)我々の方法がこの問題に適用できそうなことが判明したら,以前医学部より戴いている脳磁場のファントムデータに適用して計算にかけてみる.そしてこの結果が従来の解析結果をカバーし,さらに従来にない良い解像度の計算結果が得られたならば医学関連の学会でも報告したいと考えている.脳磁場データは測定器の発生するノイズ混入が避けられない.この誤差の理論解析は主に齋藤が担当する予定である. また,流体のPIV解析の分野にも応用したいと考えている.これは,この科研費の申請書には記載しなかったことではあるが,所属大学の同僚がPIV解析を実験の立場で行なっており,そのデータ解析に我々の方法が応用できるのではないかという発想を得たからである.これは我々の方法の新たな工学的展開の一部になることと思う.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は研究費の使用計画の一部に,計算環境を整備する予定が含まれていたが,平成23年度の研究内容から,現状の環境を少し整えるだけで十分であることがわかったので,残り分を平成24年度に使用することにした.平成24年度の研究計画では,かなり大規模の計算を実施することを考えているので,その時点での(限られた予算範囲で可能な限りの)最新の高速CPUと大容量のメモリを搭載した計算機を購入する予定である.その他には主に学会参加費,旅費,資料購入代金,別刷り等の費用に充当する予定である.
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