研究課題/領域番号 |
23540121
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松浦 勉 群馬大学, 理工学研究院, 准教授 (80181692)
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研究分担者 |
齋藤 三郎 群馬大学, その他部局等, 名誉教授 (10110397)
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キーワード | 再生核理論 / 逆問題 / 正則化 / 数値計算 / アルゴリズム |
研究概要 |
昨年度からの続きで,再生核理論を用いて任意境界が与えられた場合のディリクレ問題の解の公式を導出する研究をおこなった.この結果は第9回ISAAC Congressにおいて発表した.この研究はディリクレ問題を従来のように円周などの簡単な境界形状のみならず,現実的な複雑な境界形状にたいして具体的・効率的に計算可能な方法を示したものであり,学会においては具体的な調和関数について実例をいくつか取り上げ,その有用性を示したところ,ディリクレ問題の適用範囲が大きく広がったとの高評価を得た.ここで公表した考え方と具体的なアルゴリズムを詳しく記したものを論文(査読付き)にして,すでにアクセプトされている.発刊は2014年度の予定である. 平成23年度からの本研究課題では,再生核理論の応用により,逆問題の地平を広げ現実的な問題に適用することを目標にしてきた.初年度においては主に混合信号の再生分離問題を扱った.そこでは複素ウェーブレット変換を用いることにより信号源の数も合わせて推定する方法を考案した.この手法は脳磁図データの解析などに用いることを想定している.2年目はチコノフ正則化を用いて波動方程式の逆問題の解の陽的表現の導出をおこなった.この表現の理論的な誤差解析もおこない,この解表現の妥当性を詳細な数値計算により検証した.3年目は上記のようにディリクレ問題を扱った.また,まとめとして文部科学省主催の平成25年度「数学・数理科学と諸科学・産業との連携ワークショップ ウェーブレット理論と工学への応用」において「再生核理論とその応用」と題する招待講演をおこなった.これは我々の方法論の啓蒙のために講演したもので,多くの数理工学者,数学者,工学者に関心を持っていただくことができたのは大きな喜びであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題(3年間)の目標は再生核理論を応用することにより,逆問題の地平を広げ抽象的な理論にとどまることなく,工学的問題などに具体的なアルゴリズムを与えることであった.その意味でも,波動方程式の逆問題,ディリクレ問題の解を求めるための具体的なアルゴリズムの提案,混合信号データの元信号の再生問題という具体的な問題に成果をあがられたことは大きな収穫であったと考える.また,まとめの意味で総合報告「再生核の理論とその応用」という招待講演をおこなうことができたことは,我々の方法論を啓蒙するためには大きな意味があった.このような意味で,3年間の研究はほぼ順調に進んだものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後も我々の方法論を工学的な具体的逆問題に適用して,従来解きえなかった諸問題に挑戦していきたいと考えている.また上記の混合信号の分離問題のように医学的な逆問題にも範囲を広げていきたいと考えている.幸い,平成26年度から3年間,科学研究費(c)で「再生核理論の応用と工学的・医学的問題への新展開」(課題番号:26400192)が採択された.この研究費を使用し,群馬大学医学部をはじめ多くの応用分野の先生方とも連携して,さらなる困難な逆問題の解の構成方法,アルゴリズムの確立に注力したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
学務の都合により,予定していた海外出張(学会)が取りやめになったため. 海外出張(学会出席)に充てる予定である.
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