研究課題/領域番号 |
23540127
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
小山 大介 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (60251708)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 有限要素法 / 誤差解析 / 多重散乱問題 / 音響散乱問題 / 線形水波散乱問題 |
研究概要 |
本申請者は,本研究課題の成果として,今年度(平成23年度)に,音響多重散乱問題と3次元線形水波散乱問題に対するDtN(Dirichlet-to-Neumann)有限要素法の事前誤差評価の導出し,その結果を論文にまとめ投稿した.この誤差評価では,有限要素法による離散化から生ずる誤差だけではなく,フーリエ無限級数として表されるDtN境界条件の打ち切りから生ずる誤差も評価している.3次元線形水波散乱問題では,その無限級数がHankel関数と変形Bessel関数で表されるので,打ち切り誤差を評価するためには,それらの特殊関数の幾つかの新たな性質を証明する必要があった.これらの性質を明らかにしたことは学術的にも意義がある.DtN有限要素法の事前誤差評価を導出したことは,本方法を数学的に品質保証したという意味で学術的に意義深い,また,本方法は実際の科学技術計算においても用いられるという観点からは実際的にも意義深いと考えられる.本研究課題において今後行うDtN有限要素法ソフトウェア開発においても,そのソフトウェアの入力として領域の要素分割が入力されれば,導出した誤差評価を用いることによって,そのメッシュサイズから自動的に無限級数の妥当な打ち切り項数を算出するように設定することができる.さらに,誤差評価は,そのソフトウェアに入力する要素分割をどんどん細かくしていけば,そのソフトウェアによって得られる近似解が厳密解に収束していくことも保証する.このように,導出した誤差評価を用いることによって,信頼性の高いソフトウェアを開発することができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DtN有限要素法に関して,理論解析(事前誤差評価の導出)からソフトウェア開発までを行い,多くの人にDtN有限要素法を安心して使ってもらうことを,本研究課題の目標としているが,1年目の今年度は,その理論解析の部分を,上述の問題に対し事前誤差評価を導出することによって,ある程度固めることができた.3次元線形水波散乱問題に対するDtN有限要素法の事前誤差評価を導出するにあったっては,ソボレフ空間の補間空間理論やトレース定理に関する非常に高度な知識が必要であったため,その習得に予想以上に時間を要し,結果として,事前誤差評価の導出に時間がかかってしまった.そのため,当初予定していた,多重散乱問題に対するシュワルツの方法の収束加速に関する研究はできなかった.しかしながら,3月に本学で行った国際研究集会 International Workshop on Computational Science and Numerical Analysis (本申請者も組織委員の一人である)において,最適化シュワルツ法の第一人者であるGander教授(ジュネーブ大学)と研究連絡する機会を得て,その中で,シュワルツの方法に関する多くの有益な情報を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
Ganderらによる最適化シュワルツ法など,他の領域分割法で得られているノウハウを論文や領域分割法関連の本で調査し,それらを参考にしながら,並列計算手法の収束の加速法を開発していく.本研究費で購入したPC3台と現有のPC1台(ファイルサーバ)をネットワークでつなぎ,コンピュータ・クラスタによる並列計算環境を自室に整えたので,それを使って,数値実験用の並列計算プログラムをFORTRANとMPIを用いて作成し,その動作確認を行う.動作確認後,そのプログラムを用いて,並列化効率や加速法の効果などを本学総合情報処理センターの分散メモリー型並列計算機を用いて測定し,その有効性を検討する.弾性波の外部問題に対するDtN有限要素法の事前誤差評価も行う.Helmholtz方程式に対するDtN有限要素法のMATLABによるソフトウェアの開発も行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は,上述したように3次元線形水波散乱問題に対するDtN有限要素法の事前誤差評価を導出するのに予想以上の時間がかかってしまったので,当初予定していた,多重散乱問題に対するSchwarzの方法の収束加速に関する研究はできなかった.そのため,学会等での研究成果の口頭発表をすることができなかったので,旅費を使用しなかった.そのために「次年度使用額」が0ではなくなった.この分は,平成24年度の学会等での成果発表のための国内旅費として使用する.
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