研究課題/領域番号 |
23540129
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
畑上 到 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (50218476)
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研究分担者 |
伊藤 秀一 金沢大学, 数物科学系, 教授 (90159905)
税所 康正 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70195973)
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キーワード | ランダム項 / オイラー方程式 / 圧縮性流体 / 非圧縮性流体 / キャビティ流れ / 分岐過程 / ロトカーボルテラ方程式 |
研究概要 |
本研究ではランダムな誤差が影響を与える場合の動的システムの構造の解析を継続して行った. 特に本年度は,保存系の動的システムに対してランダムな誤差が与える影響について重点的に調べた.保存系の場合には,その構造不安定性のために,統計量を抽出することが困難である.しかしながら,圧縮性流体におけるオイラー方程式の解である定常衝撃波の位置に対するランダムなノイズの影響を追跡することによって,その平均的な挙動が求められる可能性がある.この見通しの上に立って考察を行った.結果としてランダムな誤差移入により平均的な位置は風下側にずれることが明らかになった.保存系の数値解においてもこの誤差が入ることで計算の信頼性が損なわれることを実証していると考えられ,非常に興味深い結論が得られた.また,周期が小さい擬似乱数列によるランダムな誤差が入ったときには全く異なる平均的な挙動を示すことがわかった.これはランダムネスの精度の計算の信頼性に対する重要な情報を与えると考えられる.この結果は国内学会で発表し,論文に投稿予定である. さらに散逸系であるナヴィエーストークス方程式の数値シミュレーションについても誤差の移入の影響について考察した.本年度は,キャビティ流れを例にとり,レイノルズ数をパラメータとする分岐過程に着目し,ランダムな誤差が移入したときにその分岐点が変化することを突き止めた.またその他の離散パラメータ(4次の人工粘性項の大きさや計算格子の粗密等)についての類似性や相違についても考察した.この結果は国際シンポジウムの発表する予定ある.(採択済み) 一方,3種の生物種が競争・被食者捕食者関係にあるときの変化に対する種々のパラメータの影響について調べ,数学モデルの妥当性について実際の系との皮革により考察を行った.結果は国内のシンポジウムで発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度中において,保存系に対するランダムな誤差が与える影響について,その平均的な挙動を考察する新たな知見が得られたことが大きい.この方法が応用できる系をさらに模索することによって,構造不安定性に起因する解析困難な部分を打開する見通しがついた.また,乱数列の周期がその平均的な挙動に与える影響についても知見を得ることができた.これはランダムネスを与えて物理現象を解析する場合の信頼性に関する重要な情報を与えていると考えられる. 保存系についても,その対比からランダムネスが分岐点に与える影響についても知見を得ることができたことにより,保存系の類似した系への解析への適用できる可能性があることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度前進のあった保存系へのアプローチをさらに推進する.現状では,定常衝撃波というものだけに特化した形で解析手法の開発を行ってきたが,今後はそれに類似した系,すなわちある意味では散逸系の平衡点の性質に近い対象を新たに模索する.また,散逸系で得られた知見(ランダムネスが数値解の平均的な挙動に及ぼす影響),特に分岐過程といったものが保存系ではどのようになるかについて確認したい.具体的には,マッハ数をパラメータにして,遷音速だけで亡く,超音速の領域における衝撃波の挙動に対する解析等も行う予定である. 一方で,散逸系の解析手法については,昨年度行った複雑系に対するフーリエ解析を利用した方法なども加えて,より複雑な分岐過程での影響についても調査していきたいと思っている.また圧縮性流体のナヴィエーストークス方程式系についてもランダムな誤差移入の影響についても考察する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は最終年度になるので,研究のとりまとめとしての学会発表のための旅費や論文の別刷り料が必要になると思われる.また今年度導入した計算機システムへはグラフィックス環境も整えることが終わっているので,より非定常的な過程を可視化できるように,動画システムを整備する予定である.そのための記憶装置等も消耗品費で購入する予定である.これにより,より学会発表において効果的なプレゼンテーションも可能になると思われる.
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