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2012 年度 実施状況報告書

誤差移入のランダム性を考慮した動的システムの構造解析と保存系数値解法への新展開

研究課題

研究課題/領域番号 23540129
研究機関金沢大学

研究代表者

畑上 到  金沢大学, 電子情報学系, 教授 (50218476)

研究分担者 伊藤 秀一  金沢大学, 数物科学系, 教授 (90159905)
税所 康正  広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70195973)
キーワードランダム項 / オイラー方程式 / 圧縮性流体 / 非圧縮性流体 / キャビティ流れ / 分岐過程 / ロトカーボルテラ方程式
研究概要

本研究ではランダムな誤差が影響を与える場合の動的システムの構造の解析を継続して行った.
特に本年度は,保存系の動的システムに対してランダムな誤差が与える影響について重点的に調べた.保存系の場合には,その構造不安定性のために,統計量を抽出することが困難である.しかしながら,圧縮性流体におけるオイラー方程式の解である定常衝撃波の位置に対するランダムなノイズの影響を追跡することによって,その平均的な挙動が求められる可能性がある.この見通しの上に立って考察を行った.結果としてランダムな誤差移入により平均的な位置は風下側にずれることが明らかになった.保存系の数値解においてもこの誤差が入ることで計算の信頼性が損なわれることを実証していると考えられ,非常に興味深い結論が得られた.また,周期が小さい擬似乱数列によるランダムな誤差が入ったときには全く異なる平均的な挙動を示すことがわかった.これはランダムネスの精度の計算の信頼性に対する重要な情報を与えると考えられる.この結果は国内学会で発表し,論文に投稿予定である.
さらに散逸系であるナヴィエーストークス方程式の数値シミュレーションについても誤差の移入の影響について考察した.本年度は,キャビティ流れを例にとり,レイノルズ数をパラメータとする分岐過程に着目し,ランダムな誤差が移入したときにその分岐点が変化することを突き止めた.またその他の離散パラメータ(4次の人工粘性項の大きさや計算格子の粗密等)についての類似性や相違についても考察した.この結果は国際シンポジウムの発表する予定ある.(採択済み)
一方,3種の生物種が競争・被食者捕食者関係にあるときの変化に対する種々のパラメータの影響について調べ,数学モデルの妥当性について実際の系との皮革により考察を行った.結果は国内のシンポジウムで発表した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度中において,保存系に対するランダムな誤差が与える影響について,その平均的な挙動を考察する新たな知見が得られたことが大きい.この方法が応用できる系をさらに模索することによって,構造不安定性に起因する解析困難な部分を打開する見通しがついた.また,乱数列の周期がその平均的な挙動に与える影響についても知見を得ることができた.これはランダムネスを与えて物理現象を解析する場合の信頼性に関する重要な情報を与えていると考えられる.
保存系についても,その対比からランダムネスが分岐点に与える影響についても知見を得ることができたことにより,保存系の類似した系への解析への適用できる可能性があることがわかった.

今後の研究の推進方策

本年度前進のあった保存系へのアプローチをさらに推進する.現状では,定常衝撃波というものだけに特化した形で解析手法の開発を行ってきたが,今後はそれに類似した系,すなわちある意味では散逸系の平衡点の性質に近い対象を新たに模索する.また,散逸系で得られた知見(ランダムネスが数値解の平均的な挙動に及ぼす影響),特に分岐過程といったものが保存系ではどのようになるかについて確認したい.具体的には,マッハ数をパラメータにして,遷音速だけで亡く,超音速の領域における衝撃波の挙動に対する解析等も行う予定である.
一方で,散逸系の解析手法については,昨年度行った複雑系に対するフーリエ解析を利用した方法なども加えて,より複雑な分岐過程での影響についても調査していきたいと思っている.また圧縮性流体のナヴィエーストークス方程式系についてもランダムな誤差移入の影響についても考察する予定である.

次年度の研究費の使用計画

次年度は最終年度になるので,研究のとりまとめとしての学会発表のための旅費や論文の別刷り料が必要になると思われる.また今年度導入した計算機システムへはグラフィックス環境も整えることが終わっているので,より非定常的な過程を可視化できるように,動画システムを整備する予定である.そのための記憶装置等も消耗品費で購入する予定である.これにより,より学会発表において効果的なプレゼンテーションも可能になると思われる.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Mathematical models of the generation of radiation-induced DNA double-strand breaks2013

    • 著者名/発表者名
      Y. Saisho and A. Ito
    • 雑誌名

      Journal of Mathematical Biology

      巻: Vol.67, No.3 ページ: 717-736

    • 査読あり
  • [学会発表] Study of the Effect of Numerical Conditions on Bifurcation Region in Fluid Simulations2013

    • 著者名/発表者名
      Lingxiang Tang and Itaru Hataue
    • 学会等名
      The Sixth International Conference on Information
    • 発表場所
      Hotel Arcadia Ichigaya, Tokyo, Japan
    • 年月日
      20130508-20130511
  • [学会発表] Superintegrability of vector fields and their normal forms near equilibrium points2013

    • 著者名/発表者名
      伊藤秀一
    • 学会等名
      日本数学会2013年度年会(函数方程式分科会)
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      20130320-20130323
  • [学会発表] 圧縮性オイラー方程式の数値解の構造へのランダムなノイズの影響について2013

    • 著者名/発表者名
      畑上到
    • 学会等名
      第62回理論応用力学講演会
    • 発表場所
      東京工業大学
    • 年月日
      20130306-20130308
  • [学会発表] 3種の生物の補食・競争数学モデルにおける種々のパラメータ依存性に関する研究2013

    • 著者名/発表者名
      畑上到,和泉明憲
    • 学会等名
      日本応用数理学会環瀬戸内応用数理研究部会第16回シンポジウム
    • 発表場所
      愛媛大学
    • 年月日
      20130105-20130106
  • [学会発表] 放射線による DNA 2本鎖切断生成の確率モデルについて2012

    • 著者名/発表者名
      税所 康正,伊藤 敦
    • 学会等名
      バ イオメディカル・ファジィ・システム学会第 25 回年次大会
    • 発表場所
      東京都市大学
    • 年月日
      20121226-20121227
  • [学会発表] DNA 2本鎖切断生成の確率モデル2012

    • 著者名/発表者名
      税所 康正,伊藤 敦
    • 学会等名
      2012 年度京都大学数理 解析研究所共同利用研究集会:第9 回「生物数学の理論とその応用」
    • 発表場所
      京都大学数 理解析研究所
    • 年月日
      20121113-20121116
  • [学会発表] 低 LET 放射線による DNA 2本鎖切断生成過程の確率モデ ル2012

    • 著者名/発表者名
      伊藤 敦,税所 康正
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第55回大会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      20120906-20120908
  • [学会発表] Some stochastic approaches for biological problems2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Saisho
    • 学会等名
      he 8th International Conference on Differential Equations and Dynamical Systems
    • 発表場所
      University of Waterloo, Ontario, Canada
    • 年月日
      20120801-20120804
    • 招待講演
  • [学会発表] セミ類の発音生態の問題点 -概論から数理的取り扱いまで-

    • 著者名/発表者名
      税所 康正
    • 学会等名
      日本音響学 会関西支部 第 8 回動物音響談話会
    • 発表場所
      同志社大学生命医科学部
    • 招待講演

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公開日: 2014-07-24  

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