研究課題/領域番号 |
23540131
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
浅井 暢宏 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (60399029)
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キーワード | q直交多項式 / Boas-Buck型母関数 / q超幾何級数 / Brenke-Chihara問題 / 量子確率論 |
研究概要 |
前年度末までに得た研究成果を踏まえ,Boas-Buck型母関数やその特殊ケースであるBrenke型母関数から生成される直交多項式とシュタイン法との関連について,乗法的繰り込み法の視点から連携研究者と協力して調べている.また,M. Anshelevich氏による単調確率論に現れる確率分布と単調独立性に関する研究に触発され,Brenke族のq=0に限定した直交多項式と測度の分類に着手した.これらは技術的に克服しなければならないポイントがあり最終年度も継続して取り組む必要のある課題である.一方で,多様なq変形フーリエ変換またはq変形シーガル・バーグマン変換に付随する合成積構造との関連も少しずつ姿を現し,q変形確率測度の何らかの意味での無限分解可能性や極限定理における役割について,量子確率論的理解が進むことを期待している.本年度得られた研究成果の一部は,平成24年7月に韓国で開催された「無限次元解析と量子確率論」,平成24年10月フランスで開催された「第33回量子確率論とその関連領域について」の国際会議にて講演発表した.我々のアプローチが量子確率論とその周辺分野に対して,基本的かつ興味深い多くの具体例を提供している点について,P.Feinsilver氏やL. Schott氏らをはじめとする海外研究者からの反響があった.また,本研究は量子ウオークやそれに関連するスペクトル解析に密接な関係があると予想しているが,平成24年8月に京都大学数理解析研究所で開催された研究集会「量子ウォークとその周辺」においては,浅井・久保・郭による乗法的繰り込み法のアプローチによる一連の研究成果について講演する機会を与えて頂いた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに,Brenke型母関数とそれから生成されるq直交多項式,およびシュタイン法との関係についての研究に着手できたこと.また,多様なq変形フーリエ変換またはq変形シーガル・バーグマン変換と付随する合成積構造との関連が明らかになりつつある状況であること.以上から,本研究はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度および平成24年度における研究成果を鑑み,最終年度は浅井・久保・郭の乗法的繰り込み法,多様な合成積定理およびシュタイン原理との関連をさらに追求し,非可換極限定理やそれに現れる確率分布の無限分解可能性を調べる.このために,連携研究者のみならず,他の量子確率論をはじめとする関連領域研究者との研究打ち合わせの機会を持つ.国内では京都大学や東北大学で開催される古典・量子確率論や数理物理学関連の研究集会にも積極的に参加する.海外における研究活動としては,国際会議が,韓国,ロシア等で開催予定であるため,それらに出席し講演する予定である.国内外を問わず,出席する国際会議や研究集会等においては,関連分野の研究進捗状況にも目を配りながら,本研究の最終目標に必要な研究情報の収集や関連研究者と議論を深めたい.なお,本研究課題は近年急速に発展している分野であることと,分野横断的な幅広い知識とテクニックを要するため,確率論,量子確率論,無限次元解析学,量子物理学,数理物理学,量子情報論などの文献を幅広く取りそろえる必要もある.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に出席予定であった国際会議のなかで,「第15回非可換調和解析(ポーランド)」については,勤務校での業務の為にやむを得ず参加を見送った.当該年度使用額が当初の使用予定額に比して若干減となっているのはこのことが主たる理由である. 平成25年度は以下の事柄に当該科研費を使用する予定である.内訳は主に旅費と物品費の二つに分けることが出来る. 1.海外旅費:国際会議「アジア数学者会議(釜山,韓国)」や「第34回量子確率論とその関連領域についての国際会議(モスクワ,ロシア)」等の出席に伴う海外出張旅費と滞在費に支出予定. 2.国内旅費:京都大学や東北大学をはじめとする国内大学,研究機関で開催される古典・量子確率論や数理物理学関連の研究集会・ワークショップへの出席・講演,および研究情報収集に伴う出張旅費として支出予定.また,他研究者との研究打ち合わせに伴う出張旅費にも支出予定. 3.物品費:確率論,量子確率論,無限次元解析学,量子物理学,量子情報理論に関する文献の購入,およびノートパソコン等の情報機器購入に支出予定である.
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