研究課題/領域番号 |
23540134
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小原 敦美 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90221168)
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キーワード | 情報幾何学 / 一般化熱統計学 / 正定値対称行列 / 力学系 / 共形平坦化 |
研究概要 |
離散確率分布を確率単体と見なすことで,アファイン微分幾何的な観点から導入できる統計多様体構造とその共形変換から得られる双対平坦構造について考察し,一般化熱統計学でしばしば現れるエントロピー,ダイバージェンス,エスコート分布などとの関連を明らかにした.またそれらの幾何構造と確率単体上の勾配流との関係を論じた(2nd International Workshop on Information Geometry and Affine Differential Geometryでの発表内容). 一方,正定値対称行列集合上であるクラスのポテンシャル関数の変形を考え,そこから導入されるヘッセ構造について考察した(F.Nielsen eds. Geometric Information Theory の第二章として出版予定).リーマン対称空間構造として,-logdetのポテンシャル関数から標準的に導入される幾何構造との類似点と相違点を明らかにし,特にべき型のポテンシャルから導かれる幾何の著しい群不変性および多変量q-ガウス分布集合上にβダイバージェンスから導入される幾何との対応関係も明らかにした(Entoropy誌). さらにこのポテンシャル変形から得られる正定値対称行列上のヘッセ構造の準ニュートン法の新しい更新公式とその性能についての考察結果を公表した(Journal of Computational and Applied Mathematics誌). また,標準的な情報幾何構造を対称錐へ拡張し,この空間上での対称錐計画に対する内点法アルゴリズムの計算複雑度と問題の実行可能領域の曲率の関係を明らかにした(Journal of Optimization Theory and Applications誌及びComputational Optimization and Applications誌).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一般化指数型分布族の数理,特にその幾何構造を明らかにするという本研究の第一の目的は,昨年度に得られた共形変換との関連を突破口にアファイン微分幾何の様々なアイデアや手法の援用により理解が進み,かなり達せ得られつつあるという手応えがある. また多変量一般化指数分布族の共分散行列を通して,正定値対称行列集合上の種々のヘッセ構造との対応もつけられ,その応用としての最適化アルゴリズムの研究でも成果を出すことができた.このように当初の物理(一般化熱統計学),統計(一般化指数分布)の世界での数理構造の一般化が最適化アルゴリムにも関連を及ぼせることは評価できる. 一方,副次的な目的である確率分布上の力学系の振る舞いの関係については,ある種のハミルトン系との対応がつけられることがわかった(2nd International Workshop on Information Geometry and Affine Differential Geometryでの発表内容)
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今後の研究の推進方策 |
第二の目的である一般化指数型分布族の数理と確率分布上の力学系の振る舞いの関係の解明,応用などを最終年度に向けて推進してゆきたい.上述したように,ハミルトン系に他関して得られた部分的な結果は,物理・工学・あるいは生物学的な意味づけが現時点は不明確で,良い解釈あるいは応用を模索してゆくことが一つの方策である. その他,古典的なマルコフチェーンから近年のWasserstein幾何など確率分布上の力学系の考察など研究方向の可能性は多岐に渡るので早い段階で注力する方向を決定したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
学内業務が多忙だったため,成果公表のための学会発表や共同研究者らとの議論・情報収集が計画通り進まず,旅費を予定通り消化できなかったため. 研究には,実験は基本的に不要であるが,院生も増えたので新しい計算機やソフトウェア更新が必要なので,30万円程度計上する.学会発表(海外を含む),研究打ち合わせ及び情報交換,学生引率旅費として60万円程度計上する.その他必要に応じて資料購入,諸経費などを10万円程度と予定している.
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