研究課題/領域番号 |
23540137
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐野 英樹 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (70278737)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 混合定数系 / カスケード接続 / 拡散プロセス / 移流拡散プロセス / 境界制御・境界観測 / 安定化 / 剰余モードフィルタ / 半群 |
研究概要 |
平成23年度は、はじめに、ノイマン境界制御・ディリクレ境界観測を伴う1次元拡散プロセスの出力トラッキング制御問題を取り上げた。出力の値を指定したときの平衡状態と、拡散プロセスとの誤差を記述する誤差システムを安定化するために、それを作用素の分数冪を用いた変数変換によって、有界な入力作用素、非有界な出力作用素を有する発展方程式系として定式化し、剰余モードフィルタ(RMF)を併用した有限次元コントローラを構成した。特に、ポテンシャル項の係数に関するある条件の下で、そのコントローラによって出力トラッキングが達成できることを明らかにした。つぎに、ノイマン境界制御・ディリクレ境界観測を伴う1次元拡散プロセスと不安定なODEプラントが、あるフィルタを通してカスケード接続された混合定数系の、有限次元コントローラによる安定化問題を扱った。ODEプラントは可制御かつ可観測であると仮定している。1次元拡散プロセスの部分は上記の出力トラッキング制御のときと同様に、有界な入力作用素、非有界な出力作用素を有する発展方程式系として定式化している。特に、カスケード接続する際のフィルタにRMFを用いたとき、系全体の有限次元モデルが可制御かつ可観測になることを示し、従来のRMFの手法による有限次元安定化コントローラの構成が可能なことを明らかにした。さらに、1次元拡散プロセスの部分を1次元移流拡散プロセスに置き換えても、同様の手法で有限次元安定化コントローラが構成できることを示した。これら以外に、ディリクレ境界制御・ディリクレ境界観測を伴うカップリングした1次元移流拡散方程式系に対し、RMFを併用した有限次元コントローラによって、元の無限次元系の安定度が高められることを示した。また、類似の系に対して、バックステッピング法を用いた無限次元の出力フィードバック則の構成法も示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」の最後に記した、ディリクレ境界制御・ディリクレ境界観測を伴うカップリングした1次元移流拡散方程式系の制御に関する研究は、当初は平成25年度の計画で予定していたテーマの一つであり、平成23年度には予定していなかった。しかし、そのテーマの重要性から早めに着手し、研究成果(H. Sano, 2012年)をあげることができた。この結果は次年度以降の研究の基礎となるものである。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に取り上げた混合定数系に対して、外乱に対してロバストな有限次元コントローラの構成を試みる。はじめに、非有界出力作用素をもつ放物型偏微分方程式系を対象とした有限次元 H_∞コントローラの構成法(H. Sano, 1999年)が、考察の対象としている混合定数系に拡張できるか検討する。もし、拡張できなかった場合には無限次元の H_∞コントローラを構成し、その有限次元化を試みる。最終的に、有限次元 H_∞コントローラが構成できた後に、閉ループ系の時間発展を確認するための数値実験を行い、コントローラの次数を変えて結果の違いを確認する。それ以外に、ディリクレ境界制御・ディリクレ境界観測を伴うカップリングした1次元移流拡散方程式系の制御に関する研究成果(H. Sano, 2012年)を用いて、当初、平成25年度の計画で予定していたテーマの一部に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、平成23年度よりも扱うシステムが難しくなるため、偏微分方程式論に関係する図書が必要であり、それに関する予算が3万円かかる。また、国内で研究成果を発表するために15万円、海外で研究成果を発表するために35万円、論文誌に投稿する際に5万円、論文別刷代として10万円、文具類代として2万円程度の予算がかかることを見込んでいる。なお、「収支状況報告書」の「次年度使用額」の合計欄(8,088円)は、平成23年度に不要となった文具類代であるが、これについては平成24年度の文具類代に加えて予算執行する予定である。
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