研究課題/領域番号 |
23540137
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐野 英樹 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (70278737)
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キーワード | 線形放物型システム / 内部フィードバック / 安定半径 / 剰余モードフィルタ / 並流型熱交換方程式 / 境界制御 / 境界観測 / 半群 |
研究概要 |
平成25年度は、まずはじめに、内部にフィードバックループを有する線形放物型システムの、出力フィードバック制御による安定化問題を扱った。例えば、固体燃料ロケットの燃焼を表す最もシンプルなモデルとして用いられる、境界上に点熱源をもつ熱拡散系は、内部にフィードバックループを有する線形放物型システムと見なすことができるが、この放物型システムに対して、分布制御・分布観測のもとで有限次元コントローラによる安定化法を考案した。この系は、H. Sano (2012)と同様の手法を用いて重み付けられたルベーグ空間の中で定式化すると、有界な入出力作用素をもつが、システム作用素が自己共役ではない発展方程式系として表される。特に、内部で働くフィードバック項の影響でシステム作用素の自己共役性が崩れるため、制御が難しくなっている。ここでは、内部のフィードバックループのゲインに有限次元性の仮定をおき、モード展開を行うことにより有限次元モデルを導出し、有限次元モデルの可制御性・可観測性に関する仮定のもとで、安定半径に基づく方法ならびに剰余モードフィルタ(RMF)を併用した方法の、二通りの方法で有限次元安定化コントローラの構成が可能なことを半群理論を用いて示した。 つぎに、拡散項を有する並流型熱交換方程式の、ディリクレ境界制御・ディリクレ境界観測のもとでの安定性向上問題を取り上げた。定式化には H. Sano (2012)と同様の手法を用いて、有界入力作用素と非有界出力作用素、そして直達項を有する発展方程式系として表し、モード展開を行うことにより有限次元モデルを導出した。ここで、その有限次元モデルが可制御かつ可観測になることを示し、従来のRMFを含む構造をもつ有限次元コントローラによって安定度が高められることを半群理論を用いて示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の「研究実績の概要」に記した、ディリクレ境界制御・ディリクレ境界観測を伴うカップリングした1次元移流拡散方程式系の制御に関する研究成果(H. Sano, 2012年)は、当初は平成25年度の計画で予定していた重要なテーマの一つであったが、平成24~25年度に、その成果を基にして研究を進めることができ、一連の研究成果(H. Sano, 2013年; H. Sano, 2014年)を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までに取り上げた放物型偏微分方程式を中心とした系とは異なり、支配方程式を双曲型偏微分方程式に切り替えて議論を進める。放物型のときと同様にノイマン制御/ディリクレ制御と場合分けして研究を進める。ただし、作用素の分数冪による手法は使えないので、エネルギー関数を定義し、それに基づく切り替え制御を考える。特に、有限次元系のスライディングモード制御を参考にして、系を不安定化させるコントローラをいくつか構成しておき、それらを切り替えて安定化させる手法を計画している。理論の構築が思うように進まなかった場合には、計算機を使って数値的側面から検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は海外で開催される国際会議での発表を予定していたが、それが出来なくなったために次年度使用額が生じた。 平成26年度は、支配方程式を放物型から双曲型に切り替えた立場からの研究になるため、システム制御理論と偏微分方程式論に関係する図書が必要であり、それに関する予算が3万円かかる。また、国内で研究成果を発表するために20万円、海外で研究成果を発表するために37万円、論文誌に投稿する際に5万円、論文別刷代として10万円、文具類代として2万円程度の予算がかかることを見込んでいる。 なお、「費目別収支状況等」の「次年度使用額」の合計欄(170,933円)は、平成25年度に不要となった旅費であるが、これについては平成26年度の旅費に加えて予算執行する予定である。
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