研究課題/領域番号 |
23540141
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
小松 和志 高知大学, 自然科学系, 准教授 (00253336)
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研究分担者 |
秋山 茂樹 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60212445)
後藤 了 国際医療福祉大学, 薬学部, 准教授 (50253232)
江居 宏美 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (60333051)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 準周期タイリング / grid |
研究概要 |
非周期タイリング上にgridを描くことで,その非周期タイリングをタイリング距離の意味で近似する周期タイリングの列を構成の手続きを定式化することが大きな目的である.これは準結晶の成長を記述することにあたる.そのために,非周期タイリング上のコンウェイ・ワームに注目している.ペンローズタイリングにおいて,その上のコンウェイ・ワームから,今まで知られているアンマンgridとは異なるが,元のペンローズタイリングを復元できるgridを構成するより一般的な構成法を定義できている.この復元の際に,マッチングルールがどのくらいタイルを環状に拡大することを一意的に強制するかを調べることが重要であった.当初の目的のひとつであった射影法で得られるタイリングという枠を越えてより広い対象においてgridを構成する試みを行っている.我々は,実際にいくつかの非周期タイリングを構成し,コンウェイ・ワームからgridを描くことを行ったが,我々が定式化した構成法では,gridが描けるものと描けないものがあった。そのため,gridが描けるものと描けないものの差異を記述することが必要になってしまった.これは想定されていたもので,次年度以降の課題となる.また,上に書いたように,gridから元のペンローズタイリングを復元する際に,タイルの環状拡大について調べることが重要であった.我々は環状拡大というタイルの拡大をパッチと呼ばれるタイルの集まりの境界を記号列で表し,そのsubstitution ルールを用いて表現することを行っている。この表現を用いて,ユークリッド平面のみならず,双曲平面のタイリングにおいても,タイリングの非周期性とタイリング同士の違いを記述する方法を定式化することができた。これは本研究課題において大きな役割を果たす結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペンローズタイリングにおいて,その上のコンウェイ・ワームから,今まで知られているアンマンgridとは異なるが,元のペンローズタイリングを復元できるgridを構成するより一般的な構成法を定義できている.この構成法を用いることにより,gridが描けるものと描けない非周期タイリングが存在することが判明し,次年度以降にその特徴を調べることとなる.gridから元のペンローズタイリングを復元する際には,一点からタイルを環状に拡大した局所配置を調べることが重要であり,それを調べることで,ユークリッド平面のみならず,双曲平面のタイリングにおいても,タイリングの非周期性とタイリング同士の違いを記述する方法を定式化することができた。また,本課題における手法の副産物として,環状分子の立体構造の数理モデルの配置空間のトポロジーを調べることに応用できた.この結果は将来的には本課題にリンクする高分子準結晶のフォールディング構造の近似に使える可能性を有している.以上より,トータルとしては、当初予定していた成果とほぼ同等の成果が得られたものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
gridの構成において,我々が定式化した構成法では,gridが描けないタイリングがあった。そのため,gridが描けるものと描けないものの差異を記述することが必要になってしまった.そのために今後はコンウェイ・ワームの方向をコンウェイ・ワームの境界を成すエッジの頻出度を用いて記述することを行ってゆく.gridから,元のタイリングを近似する周期タイリングの列を構成する方法をまず,ペンローズタイリングにおいて調べ,より一般に定式化してゆく.近似列から逆にコンウェイ・ワームの方向を記述することも考えてゆきたい.一点からタイルを環状に拡大した局所配置を調べることが重要であり,それを調べることで,ユークリッド平面のみならず,双曲平面のタイリングにおいても,タイリングの非周期性とタイリング同士の違いを記述する方法を定式化することができた。この結果をいち早く成果を論文として発表することで,関連する研究者との議論を通して,環状拡大という手法を確立したい.また,本課題における手法の副産物として,環状分子の立体構造の数理モデルの配置空間のトポロジーを調べることに応用できるがこの方向性でも研究を進めてゆく.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の計画に基づく経費執行について,4月に支払いすべき経費が残っているため,次年度使用額が存在するように見えるが,実際には,全額を執行予定である.そのため,次年度の研究は,当初の計画通り進める予定である.
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