研究課題
本研究の目的は、精度保証付き数値計算で得られたアイディアをウェーブレット解析と融合させて新たな画像処理法を開発し、その技術に対する数学的な理論(画像数学)を構築することである。この目的を達成するため、昨年度までに、シフト不変性をもつ2重ツリー複素数ウェーブレットとダイアディック・ウェーブレットの2つを中心に検討し、これらと区間演算を組み合わせて、従来のデジタル画像電子透かし法よりも画像圧縮や回転・拡大縮小といった攻撃に対して耐性のある電子透かし法の開発に成功した。また、デジタル音声へも適用できるように改良した。さらに、デジタル画像の真正性を担保するために、改ざん検知が可能な電子透かし透かし法の開発を行った。今回開発した方法は、改ざんの有無を検知するだけでなく、その位置までもかなり正確に特定する、という特徴を持つ。また、改ざんの有無を検知するために原画像を必要とせず、改ざんされたと思われる画像(テスト画像)だけがあれば検知できる。今年度は、ウェーブレット変換と区間演算との融合がもたらす数学的な性質を調べ、区間演算に基づいてダイアディック・ウェーブレット変換すれば、その高周波成分に低周波成分が含まれることを数学的に明らかにした。また、この性質を生かしたまま高速演算ができるよう、区間演算を丸め操作と浮動小数点演算で実装できるアルゴリズムを開発した。これにより、ダイアディック・ウェーブレット変換に基づく改ざん検知付き電子透かし法の開発も可能になった。以上のように、区間演算とウェーブレット変換の融合によって新たな電子透かし法が開発できたという事実は、これらの融合によって新たな画像処理技術の開発を示唆している、とも考えられ、この点においても重要な成果である。
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